本書のおかげで、得体の知れない長襦袢というものの正体が見えてきた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1703)】
ハナユ(ハナユズ)、直径15cmほどのシシユズ(オニユズ)、デコポン、マユミ、トキワサンザシ、ナンテン、センリョウ。キノミセンリョウの実をカメラに収めました。我が家の庭のハボタンの紫色の葉が鮮やかです。因みに、本日の歩数は10,152でした。
閑話休題、『長襦袢(ながじゅばん)の魅力――着物の下の遊び心、女心』(岩田ちえ子・中村圭子・中川春香編著、河出書房新社)のおかげで、得体の知れない長襦袢というものの正体が見えてきました。
「『着物美』には本来欠かすことができないはずの長襦袢が、いつのまにか下着扱いになり、色を失い、長いあいだみすごされてきたように思われます。平安時代の貴族の下着が小袖へ、江戸時代には半襦袢から長襦袢へ、そして明治、大正、昭和と花開き、現代に再び下着へ戻る流れには興味深いものがあります。本書では、大正から昭和初期に過渡期を迎えた、大胆で、かつ自由な遊び心あふれる、美しいアンティーク長襦袢を紹介します。また、抒情画、文学等を通して、上に着る着物にはない長襦袢の魅力をご覧いただきます」。
長襦袢とは何なのでしょうか。「長襦袢とは着物の下に着る、ほぼ着物と同じ形の衣類である。・・・着る目的は一般的に着物の汚れ除けと、すべりをよくするためと、防寒となっている。・・・下着にしては大事なお洒落ポイントである半襟が見え、動けば袖と振りからチラリ、裾からチラリとこぼれ、意外に目立つのである。結果、現代の洋服のアイテムの名称には収まりきれない、最初から見せることを前提にした、日本だけに見られる独特な衣類であろう」。女性が動く度に、着物の開口部(振り、袖口、裾等)から見え隠れする美しい色柄の調和を楽しむものだというのです。
「幸田文の(『きもの帖』の)『こぼれる』のなかには、『髪の形とうしろ姿がいいので評判の人がいましたが、・・・工夫のしどころは帯ではない、袖の振八つしかない、といっていました』とある。『絵葉書の空の色みたいな水色の袖』が袖裏の紅絹の赤と水色が重なって、『すかっと水色が動くのはおもしろうございました』と書いている。襦袢に対する愛着を感じる」。