にくむこころにて、ひとの非をみるべからず。・・・【ことばのオアシス(68)】
【薬事日報 2011年6月10日号】
ことばのオアシス(68)
にくむこころにて、ひとの非をみるべからず。
――道元
道元の『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』の「重雲堂式」巻の一節。この直前の一節「他人の非に手かくべからず」と上掲とで、弟子たちに「他人の欠点をあげつらってはいけない。また、憎しみの心で他人の欠点を見てはならない」と戒めている。
道元の思想は興味深いが、その出自も注目に値する。彼は1200年に内大臣・久我通親を父に、前摂政関白・藤原基房の娘・伊子(いし)を母として生まれた。伊子は10代半ばで、当時、京に入った木曾義仲に政略的に嫁がされ、義仲が非業の死を遂げた後、時の権力者・通親に嫁すという数奇な運命を辿ったのである。
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