著者が旅行時に手にした小物、土産品を巡るエッセイ集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2919)】
カロライナジャスミン(写真1、2)、クルメツツジ(キリシマツツジ。写真3)、シバザクラ(写真4、5)が咲いています。
閑話休題、エッセイ集『旅行鞄のガラクタ』(伊集院静著、小学館)では、著者が旅行時に手にした小物、土産品が扱われています。
「このちいさな土産品はイタリアへの旅で、フィレンツェに立寄った折に、私ではなく家人が通り沿いの小店で求めたもので、ヴェッキオ宮殿のミニチュアである。私はこのミニチュアの存在を知らなかった。今回、連載を一冊の本にしたいと申し出があった折、家人がこれを仕事場の机の上に置いた。『ほう、こんなものをいつの間に?』。・・・このフィレンツェの宮殿のミニチュアは実によくカタチをこしらえている。メディチ家の野望と、共和国の威厳があるのだが、可愛いのがイイ」。かつて訪れたフィレンツェを懐かしく思い出してしまいました。
「『二人ともやめなさい。ガラクタとわかって買ったんだ。セルベッサ(ビール)一杯分だ』。このガラクタ(フィゲラスの魚の木偶)を見るたび、二人の男のやりとりが懐かしく思い出される。スペイン北東部、フィゲラスという港町にサルバドール・ダリの美術館、『ダリ劇場』を見学に行った折の話である。・・・ダリの生き方は自由奔放であったが、その作品は彼以外には創造しえない素晴らしい力量と、情熱で満ちあふれている。作品の真贋は持ち主が喜んでいればいいのである」。そのとおり!
「旅はいつも楽しいことばかりではない。切ない思いをかかえてしまうこともある。人の感情、記憶といったものは厄介なもので、いったん哀しみの周辺に気持ちが入り込むと、自分一人の力で、そこから這い上がることができない時もある。哀しみにもいろいろあるのだろうが、大半は近しい人、大切な人との別離である。これは生きている限りしかたのないことなのだが、それでも哀しみの淵のようなところに佇んでしまうと、どうしようもなくなる」。大切な人との別離は耐え難いことでしょう。