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生成AIとは、ビジネスパーソン一人ひとりが優秀な秘書を抱えているようなもの・・・【山椒読書論(794)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年5月31日号】 山椒読書論(794)

世界の潮流2023~24』(大前研一著、プレジデント社)で、とりわけ注目すべきは、生成AIに関する部分である。

大前研一は、米国のベンチャー企業オープンAIの「ChatGPT(チャットGPT)」と従来のAIとの違いをこう説明している。「対話型AIとは、人間とコンピュータの会話をより人間同士の会話に近くする技術である。そして、チャットGPTの場合、この対話型AIに加えて、文章や画像、動画などを瞬時に生成する生成系AIとしての側面も持っている。つまり、人間の言葉を理解して会話を行い、その指示に従って、文章の作成や翻訳、要約、校正、さらに音声のテキスト化、プログラミングなど、さまざまな機能を可能としている」。

さらに、「モラル判断が可能で、仮に『強盗に入る方法を教えてほしい』という質問を入力したら、『違法行為は奨励しない』という回答が返ってくる。さらに『自分の家が強盗被害に遭うのが心配だ』という質問を投げれば、対策を列挙するだけでなく、『絶対的安全はないので、不安があるならセキュリティの専門家に相談してください』とあたかも質問者と会話しているかのようなアドバイスをしてくれる。データの分析や予測を得意としていたこれまでのAIとは雲泥の差である」と好意的である。

一方で、問題点も指摘している。「現時点では、不正確な回答や明らかな誤りも多く、まだまだ改良の余地がある」。

今後の予測については、「検索の概念や現在グーグルが圧倒的に優位を占めている検索サービスの業界構造が変わる可能性がある。また、従来2045年に到来すると言われていたシンギュラリティ(AIが人間の知能を超える技術的特異点)が予想より早く訪れるとも言われている。欧州では、データ利用の透明性の欠陥を理由に、規制する方向である」。さらに、マイクロソフトの「BingAI(ビングエーアイ)、グーグルの「Bard(バード)」、中国のバイドゥ(百度)の対話型AIにも言及している。

AIが発達したサイバー社会でどのように生き残っていくか――。「0から1を生み出す構想力、状況を認識して深く考察するための質問する力、具体的にアクションを起こす問題解決力を鍛えることが不可欠になってくる。・・・AIやスマホを使って膨大なデータを有効に活用し、人間にしか創れない付加価値を持った製品やサービスを生み出すことである。結局、自分を守るためには、それが一番確実かつ効果的な方法なのである。大変な時代になったと思うか、逆にチャンスに溢れた時代になったと思うか。すべてはあなた次第である」。

著者は、生成AIとは、ビジネスパーソン一人ひとりが優秀な秘書を抱えているようなもので、使いこなせば仕事の生産性は格段に向上するだろうと言っているが、まさに、そのとおりである。