ヒト以外の動物に心があるか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3104)
タマスダレ(写真1、2)、ニラ(写真3、4)が咲いています。カラスウリ(写真5、6)が実を付けています。
閑話休題、『動物心理学への扉――異種の「こころ」を知る』(中島定彦著、昭和堂)の「動物心理学」とは、動物の心(mind)を探ろうとする科学です。
「ヒトも動物ですが、動物心理学でヒトが対象となるのは、ヒト以外の動物種との比較において考察される場合に限られます」。
「ここで考えねばならない重大な事項が2つあります。まず、『ヒト以外の動物に心があるか』という疑問です。現代心理学は意識の科学として誕生しました。心=意識とすれば、上の疑問は『ヒト以外の動物に意識はあるか』と換言できます。2012年に英国ケンブリッジ大学に集まった神経科学者や動物学者らは、『意識を生み出す神経学的基盤を持つのはヒトだけではないことを示す多くの証拠がある。すべての哺乳類と鳥類、そしてタコなどもそうした神経学的基盤を有する』と宣言しました(意識のケンブリッジ宣言)。つまり、そうした動物に意識を認めたわけです。しかし、意識の定義は学者によってさまざまです。動物の意識を評価する具体的項目を提案している研究者もいますが、学界の合意は得られていません。『心=意識』としてよいかという問いや、そもそも心とは何かという根源的謎もあります。これらに簡単な答えはありませんが、本書はそうした課題に対する皆さんの見識を広げ、深める役に立つでしょう」。
著者の宣言どおり、「動物心理学の枠組」、「感覚と知覚」、「本能」、「学習」、「記憶」、「コミュニケーションと『ことば』」、「思考」、「社会」、「発達と性格」の順で、理解が深められるよう解説されています。
「もう一つの重要事項は、間違った擬人化です。われわれはヒトの観点でヒト以外の動物の行動を解釈しがちです。例えば、鍵を外して扉を開ける愛犬を見た飼い主は、鍵の構造を理解した天才犬だと思ってしまいがちですが、場当たり的な試行錯誤で獲得した機械的な行動なのかもしれません。実験や観察の結果から動物の心的能力について結論する際は、つまらない説明(興ざめ仮説)を否定できるかどうか検討せねばなりません」。