主人公の学生は、心酔する思想的指導者から首相の暗殺を命じられたが・・・ ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(901)】
【amazon 『手塚治虫傑作選「戦争と日本人」』 カスタマーレビュー 2017年10月2日】
情熱的読書人間のないしょ話(901)
散策中に、クロッカス・スペキオスス、タマスダレ、シュウカイドウ、ホトトギス、キキョウ、コスモス、ハゴロモノマツ(グレヴィレア・ロビンゴードン)の花を見かけました。オキナワスズメウリ、ペルシャグルミの実を見つけました。因みに、本日の歩数は10,258でした。
閑話休題、『手塚治虫傑作選「戦争と日本人」』(手塚治虫著、祥伝社新書)を読んで、びっくりしました。
本書には、手塚治虫が自分の体験した戦争の悲惨さを伝えようとした漫画9作品が収録されているのですが、何と、巻頭の「悪魔の開幕」(1973年発表作品)では、日本の近未来かと錯覚させられるような世界が描かれているではありませんか。
「丹波首相は 自衛隊をはっきり軍隊といいきり・・・ 国民のすべての反対をおしきって 憲法を改正してしまった」。
「しかも! 核兵器の製造にふみ切ったのだ。――日本が中国やその他の国の圧力から 東南アジアの勢力をまもるという名目でだ!」。
「この3年間 国民の反対運動はことごとく弾圧されてしまった!」。
「何万人かが官権に殺され 罪を被せられた」。
「もちろん 野党は丹波首相の非常大権のもとで まるで手足をしばられた猫みたいなものだ・・・」。
こんな状況下のある日、主人公の学生・岡重明は、心酔している地下運動の思想的指導者から丹波首相の暗殺を指示されます。その方法は君に任せると言われた岡は、着々と準備を進めます。
暗殺が成功したかと思われた瞬間、思いがけないことが起こります。
そして、この思想的指導者の正体は・・・。
本作品には、「戦に強いことを国の誇りとするのは止めよう」という戦後平和主義を投げ捨ててはいけないという、手塚の思いが込められているのです。