リクルートエージェントの経営、Jリーグの経営を成功させた村井満の「天日干し」とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3148)】
東京・台東の上野恩賜公園のイチョウが黄葉しています(写真1、2)。西郷隆盛像の近くで、大道芸の紙芝居が演じられています(写真3)。上野駅は年の暮が近いことを感じさせます(写真5~7)。因みに、本日の歩数は11,776でした。
閑話休題、『天日干し経営――元リクルートのサッカーど素人がJリーグを経営した』(村井満著、東洋経済新報社)から、企業、組織で物事を成し遂げる上で必要なことについて、多くのヒントを得ることができました。
「企業経営や人生の中では、想像もできないような修羅場に直面したり、取り返しのつかないような大失敗を犯したりしてしまうことがある。そうした局面を乗り越えたときには、思いもよらない大きなチャンスが得られるかもしれない」。
「企業でもライバルとの市場での戦いに勝つために、総力をあげて努力を重ねている。時に戦略論を駆使したり、生成AIを使って検討をしたりするものの、相手も同様の努力をしている可能性もあり、途方に暮れることもある。個人の戦いならまだしも、組織としての戦いに勝利するためにはいったい何が必要なのだろう」。
「私自身、未経験の不安や修羅場のみならず、数多くの困難に出会う中で、何とか前向きに組織変革を進め、人生を最大限燃焼して精一杯生きようともがき苦しんできた。その中で、私の奥底に沈殿し続けていたのが『天日干し』という概念だった」。
●人の緊張感が大きくなることを「成長」と言い、緊張がなくなったときに成長が止まったと理解すべきである。緊張しているということは、大切な何かが実現できる可能性を知らせるサインでもある。
●天賦の才能や人間力、リーダーシップを備えない人間にも足を使ってクラブを訪ねることくらいならできる。チェアマン就任早々に、まずはそんなことから、体ひとつでクラブ行脚を始めたのだ。
●サッカーを続けていく限り誰もが心が折れるような挫折を経験する。だからこそ、折れた心を立て直す術を知る選手こそが長く活躍し続けていたのだ。その自らを立て直す術として、自らを開き謙虚に傾聴する姿勢と、自分の姿をそのままに人に伝えることがある。傾聴と伝えることを繰り返してさらに研鑽を積んでいく。まさに天日に自らをさらし、謙虚に周囲の意見を吸収する。成功者の共通要素は、天日干しの思想そのものであることが見えてきた。
●見るまえに跳べ。
●天日干し経営とは、多くの人の感性や意見を交換する開かれた場の創出のことである。閉ざされた空間をつくらない経営手法だ。表現を変えれば、「鏡」の多い空間である。自分の行為が客観的に映り、相手側の立場も客観的に映るのだ。一方的な思い込みの世界ではない。減量には体重計が必要であり、美しくなるには鏡が必要なように経営には「天日干し」というフィードバック機能が必要なのだ。
●上司に忖度することなく、たとえそれが社長であれ、役員であれ、上司であれ、言うべきことを言える風土は、リクルートがその危機を乗り越えてきた原動力にもなったし、若くして次々と新たな経営者を生み出し続けていることとも無関係ではないだろう。
●環境が変われば天国にもなれば、地獄にもなる。生業がもつ本質とそこに集う人間の価値観のベクトルを合わせていくことがそのエネルギーを最大化することを知ったのだ。そういう意味で我々はリクルートを「変化」で埋め尽くすことを覚悟したのだ。
●理想とするキャリアの方向に導く、その予期しない偶然の出来事を自ら引き寄せる5つの要因があるという。「好奇心」「持続性」「楽観性」「柔軟性」「冒険心」の5つだ。
●「早く×速く」、「スピードは本気度の代替変数」。
●サッカーはミスのスポーツ、「PDCAではなく、PD『M』CAに」(「M」=Miss<失敗>)。
どのようなときに「天日干し経営」は有効か、という問いが立てられています。
①組織であれ、個人であれ未知の分野や未経験の世界に向かうとき
②大きなトラブル、不祥事などに遭遇したとき
③環境変化に適応し、イノベーションを起こしたいとき
④組織の個々の構成員の関係性を強化し、強い組織をつくりたいとき
私事に亘るが、著者と会話を交わしたことがあります。私が小さな会社イーピーメディカルの社長としてCSO(MR派遣・業務受託)事業を立ち上げた時、人材紹介会社リクルートエージェントの当社担当者の志村和哉さんから、そして、その後を継いだ森本貴行さんから多大な協力が得られたおかげで、当社は創業から3年半後に業界4位まで駆け上ることができたのです。優秀な人材を確保する上で人材紹介会社の活用が大きな効果を収めた経緯をリクルートエージェントの社員たちに話してほしいとの依頼を受け、講演した時が、当時、リクルートエージェントの社長であった著者との出会いでした。