編者・関川夏央の解説が秀逸な鉄道文学アンソロジー・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3285)
千葉・柏の「あけぼの山農業公園」では、チューリップ(写真1~4)が見頃を迎えています。写真を撮られるのが大嫌いな撮影助手(女房)を、遠くからパチリ。ソメイヨシノ(写真5~7)、ソメイヨシノの後継品種と位置づけられているジンダイアケボノ(写真8)、オオシマザクラ(写真9、10)、シナレンギョウ(写真11、12)、アカバナミツマタ(写真13、14)が咲いています。何故か親しみを感じるエノキ(写真15)が聳えています。アゲハ(写真16)をカメラに収めました。遠くに筑波山が望めます(写真17)。因みに、本日の歩数は11,746でした。
閑話休題、『鉄道文学傑作選』(関川夏央編、中公文庫)は、明治時代の鉄道開設以降の鉄道文学のアンソロジーです。
取り上げられている作品が興味深いだけでなく、それぞれに付された編者解説が読み応えがあるのも本書の魅力になっています。
例えば、宮沢賢治作品の解説「死者と再会する旅――『オホーツク挽歌』ほか」には、こうあります。「宮沢賢治は1923(大正12)年7月31日、花巻駅21時59分発の青森行き普通列車に乗った。26歳、花巻農学校教員であった賢治の夏休みの旅の目的地は樺太であった。・・・『あいつはこんなさびしい停車場を たつたひとりで通つていつたらうか』。賢治は、その8ヵ月前の1922年11月27日、みぞれ降る寒い朝に満24歳で死んだ妹とし子に会いに樺太へ行ったのである。賢治は、北の果てに行けばとし子に会えると信じていた。・・・1933(昭和8)年、賢治が37歳で死んだあとに発見された遺稿『銀河鉄道の夜』は、死者に会いに行ったこの旅で発想されたのである。銀河鉄道の始発駅は樺太の栄浜駅であった」。
横光利一作品の解説「『旅愁』と『帰心』――横光利一『旅愁』」では、横光の愛妻に言及されています。「横光の『帰心』を駆り立てていたのは千代夫人であった。愛読者として訪ねてきた彼女の上品な美貌にほとんど一瞬のうちに心を奪われた横光は、時をおかず妻としたのである。欧州旅行中は山形県鶴岡の彼女の実家に預けた家族に、とりわけ妻に、一日も早く会いたいという思いはつのった。それが、1年と予定していた旅を半年に縮めた理由であった」。
内田百閒作品の解説「『むっとする』――内田百閒『区間阿房列車』」は、百閒の本質を衝いています。「全体に『阿房列車』シリーズは、昭和戦前の『じいさん』が戦後という時代に『むっとする』お話で、威張るのは老人の義務、横着は文士のあるべき姿、という考えを体現した作品といえる。それにしても60歳を過ぎたばかりで老人になれるとは、よい時代であった」。
関川夏央恐るべしと再認識させられた一冊です。