榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

拾い読みもバカにはできないぞ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3309)】

【読書の森 2024年5月3日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3309)

長年、施設で生まれ育ったコウノトリたちを放鳥し続けてきたが、このほど初めてペアリングに成功し、2羽の雛を育てています(写真1~6。写真5は辛うじて雛の頭部が見える)。アオサギ(写真7)、チュウサギ(写真8)、子育て中のツバメ(写真9~12)をカメラに収めました。バラ(写真13~15)が咲いています。陽が眩しくて顔を顰める撮影助手(女房)。因みに、本日の歩数は11,353でした。

閑話休題、『本は眺めたり触ったりが楽しい』(青山南著、ちくま文庫)は、読書を巡るエッセイ集です。

読書好きにとって興味深い話が満載です。

●フランソワーズ・サガンは「プルーストからすべてを学んだ」と公言しているが、『失われた時を求めて』の第6篇「消え去ったアルベルチーヌ」の一節を読んだだけだというエピソードを引いて、「拾い読みもバカにはできない。拾い読みで人生ががらりと変わることもあるわけか」と、著者は妙に納得しています。

●『白鯨』の映画脚本を書くことになったレイ・ブラッドベリがボスにあらすじを提出する必要に迫られ、何度も書き直すが長いと突き返されます。とうとうカッと来て書いたのが「これは鯨にカッと来た男の物語である」というエピソードは、「あらすじとは、いったい、なんなのだ?」と結ばれています。

●ウンベルト・エーコの言葉を引いて、これぞ読書の醍醐味だと絶賛しています。「正しい読み方などない。読書の力とは、エーコがいうように、心を鍛えてくれるところに、思索にはずみを授けてくれるところにある」。

翻訳家としての青山南は知っていたが、本書を読み、私と好みが一致するエッセイストでもあることを知りました。