榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

絶世の美貌の貴族令嬢と、勇敢な山賊の若者との道ならぬ灼熱の恋・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3313)】

【読書の森 2024年5月7日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3313)

バラのカクテル(コクテール。写真1~3)、キショウブ(写真4)、ダッチアイリス(写真5~7)が咲いています。スナップエンドウ(写真8)が花と実を、ビワ(写真9)が実を付けています。我が家では、ボンザマーガレット(写真11)、ミヤコワスレ(写真12)、ガザニア(写真13)が咲いています。

閑話休題、書斎の書棚から『カストロの尼』(スタンダール著、桑原武夫訳、岩波文庫)を引っ張り出してきました。本書に収められている『カストロの尼』は、59年前に読んだ時は、いかにもスタンダール的な情熱的恋愛の書という印象だったが、今回、読み直してみると、違う光景が見えてきました。

16世紀のイタリア――。富裕な貴族の17歳の令嬢にして、絶世の美貌と優しい心の持ち主、エーレナ・ダ・カンピレアーリと、山賊の22歳の勇敢な若者、ジュリオ・ブランチフォルテとの道ならぬ灼熱の恋が情熱的に描かれていきます。

ジュリオは死んだという母の嘘を信じた19歳のエーレナは尼僧院に入り、その8年後、母の強力な後押しによって尼僧院長になります。

そのエーレナが30歳で死を選ばねばならなかったのは、なぜか――。生きていると知ったジュリオに宛てた遺書の「あたしも三十になり、世間からはみさお正しいといわれ、お金もあり、尊敬されておりながら、ほんとうはこの上もなく不幸だったのです」という一節が胸に沁みます。