榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

騎士になりたい若者向けの実践非公式マニュアル・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3369)】

【月に3冊以上は本を読む読書好きが集う会 2024年7月1日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3369)

サルスベリ(写真1)、ヒマワリ(写真2)、アガパンサス(写真3~5)、ムラサキカタバミ(写真6、7)が咲いています。ムラサキカタバミの生命力の強さには驚かされます。

閑話休題、『中世の騎士の日常生活――訓練、装備、戦術から騎士道文化までの実践非公式マニュアル』(マイケル・プレストウィッチ著、大槻敦子訳、原書房)は、何ともユニークな書物です。

「本書で言う『騎士』は、戦があれば(場合によってはなくても)主君のもとへと馳せ参じる中世ヨーロッパの生身の武人たちである。ここでは、アーサー王伝説とは対照的に、実在した人物をもとに騎士の本当の姿が描かれている。騎士になりたい若者向けの非公式マニュアルというスタイルをとる本書は、1300~1415年の『最新』情報をもとに、15世紀初頭に執筆されたことを装う歴史書である。訓練、儀式、装備、戦術、そして戦争ビジネスにいたるまで、ときに小ネタをはさみながら、騎士の実生活を余すところなく解き明かしている。言うなれば、中世の軍人の解説書だ。とはいえ、なにより大事なものは騎士道精神と武勇だと言われても、騎士とて人間である。おそらく理想と現実のはざまで悩み、仕事をして出世を望み、資金繰りを考え、女性関係で気を揉み、もしかすると中間管理職の悲哀のようなものまであったかもしれないなどと思ってしまうのは訳者だけだろうか」。この訳者の言葉が、本書の本質を的確に言い表しています。

例えば、「騎士道の理想」は、「寛大さ、礼儀、武勇、忠誠」とされています。

「貴婦人と乙女」については、「騎士道文化は女性を重んじる。女性は騎士を奮い立たせる存在だ。彼女たちは模擬戦や馬上槍試合で騎士を応援する。彼女たちが励ませば、騎士は戦いに赴こうという気になる。戦っている理由に疑問を抱いたら、最愛の女性を思い浮かべて、その人が自分に託した夢の実現に努めればいい。・・・現実は、それより若干複雑だが」とあります。

「リスク」は、こう記されています。「事業計画において、騎士として富を築くと主張するのは簡単だろう。身代金、戦利品、みかじめ料はみな大きな利益を生む可能性がある。しかしながら、そこには少なからぬリスクがる。約束された報酬が支払われないかもしれない。自分で自分の身代金を払わなければならないかもしれない。手に入れた土地が倦む収益より守るためのコストのほうが高くつくかもしれない。少なくとも収入の3分の1は自分が仕える領主に持っていかれる。よく考えよう。栄光と名誉の獲得より金儲けに重きを置くと、戦いへの出陣は高リスク戦略である」。

正直に告白すると、騎士に対する私の憧れは、かなり目減りしてしまいました。