榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

コケ(苔)と人間との間に、本当に友情は芽生えるのか・・・【山椒読書論(6)】

【amazon 『コケはともだち』 カスタマーレビュー 2012年1月31日】 山椒読書論(6)

道端のコケになど興味はなかったのに、『コケはともだち』(藤井久子著、リトルモア)を読んだら、コケのことが気になり出し、コケと友達になりたくなってしまったのだから、これは実に不思議な本である。

若い独身女性のK子が、春のうららかな陽気に誘われて、ベランダに出て洗濯物を干した後、枯れてしまった植物の植木鉢の土を捨てようとして、コケの存在に気づく。

この偶然の出会いから、K子とコケの友情物語がスタートする。ジメジメ、ベッタリ、地味、陰気というイメージしかなかったコケだが、「雨上がりのサプライズ」、「小さなお客さんたち」、「ふたたびコケが枯れた」、「コケの世界へようこそ」、「あの日、あなたに会ってから」と徐々にコケの魅力に目覚めていく。

この小型の薄い本の40%近くが、「ともだちになりたいコケ50種」というタイトルのカラー図鑑になっている。カラー写真に添えられたイラストがかわいらしい上に、ポイントを押さえた説明文に癒やされる。例えば、「イワダレゴケ」については、「・・・主となる茎の途中から1年に1つずつ新芽が出て、それが次の主となる茎となり、階段状に成長していく。『規則正しく美しく』が本コケのモットー。堅実な成長ぶりをほめてあげると喜ぶ」といった具合だ。

50種の中から私が仲良くなりたいコケが決まったので、春が来たら、探しにいこうっと。