イスラエルがパレスチナ人に「ホロコースト」を行い続ける理由・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3381)】
ユリが咲いています。
閑話休題、私はかねがね、ここは古代に自分たちの祖先が治めていた土地だから私たちのものだというイスラエルの言い分に納得できないものを感じてきました。そして、イスラエルがパレスチナ人にナチス同様の「ホロコースト」を行い続ける理由を知りたいと思っていました。この疑問に明快な答えを示してくれたのが、『ガザ紛争の正体――暴走するイスラエル極右思想と修正シオニズム』(宮田律著、平凡社新書)です。
著者・宮田律も、「イスラエルは、エルサレムは古代ユダヤ王国の首都だったからイスラエルの首都であると主張する。しかし、アラブ・イスラーム勢力はエルサレムを1200年間にわたって支配したのに対して、ユダヤ支配は424年間にすぎない。・・・古代に支配していたから自らの土地であるという理由は現在の国際社会の秩序を混乱に陥れるものだ。そのような主張を世界の多くの国が行うようになったら、さらに多くの地域紛争が発生することだろう」と述べています。全く同意見です。
イスラエルが侵攻しているガザは、「世界最大の監獄」とも呼ばれるように、パレスチナ人たちの移動や、物資の搬入に厳格な制限があり、建築物資の不足のためにインフラや住宅の整備も極端に滞ってきたこと、パレスチナ人たちがガザで利用できる清潔で、飲料に適する水は全水量のわずか4%と見積もられていること、さらに、電力の制限もあり、一日の数時間しか電力の使用ができない状態にあること――が告発されています。ガザのパレスチナ人たちは犯罪者同様の扱いを受けてきたのです。
過激な修正シオニズムの流れを受け継ぐ極右カハネ主義者であるネタニヤフ政権のスモトリッチ財務相は、2023年3月、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区のフワーラ村(人口7000人)を「消滅させる必要がある」と発言し、同年6月、ベングビール国家治安相は、イスラエルの治安状況を安定させるために数十人、あるいは数百人、さらには数千人のパレスチナ人を殺害することがイスラエル政府の責務であると語り、彼はパレスチナ人を「テロリスト」と呼んでいます。犯罪者扱いに対する蓄積された不満と、極右閣僚たちの過激な言動が、2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃の背景にあると、著者は考察しています。
著者は、ネタニヤフ首相を頂点とするイスラエルの極右を含む政権は占領地であるヨルダン川西岸にさらに100万人のユダヤ人たちを住まわせることを考え、将来的にはヨルダン川西岸をイスラエルに併合するつもりだと喝破しています。スモトリッチ財務相はガザの戦後処理について、ガザのパレスチナ人人口を減らしてイスラエル人を再入植させようと訴えており、ベングビール国家治安相は積極的に極右の入植者たちに鉄砲を与え、パレスチナ人への暴力を奨励するような姿勢を見せるなど、パレスチナ人の追放を視野に入れているというのです。
ナチズムの犯罪を再現するイスラエル、増大するガザの人道危機に対して、日本は何をすべきかにも言及されています。
ガザ紛争を正しく理解するために、広く読まれるべき一冊です。