コンゴとアマゾンの先住民虐待を告発したロジャー・ケイスメントという男・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3465)】
本日はどこへも出かけず、読書に集中。女房が、友達が育てたバターナッツというカボチャを貰って帰宅しました。
閑話休題、『ケルト人の夢』(マリオ・バルガス=リョサ著、野谷文昭訳、岩波書店)は小説の形をとっているが、大英帝国の外交官としてコンゴとアマゾンの先住民虐待を告発し、アイルランド独立運動家として絞首刑に処されたアイルランド人ロジャー・ケイスメントのコンゴ、アマゾン、アイルランドにおける活動記録に裏付けられています。
本書のおかげで、ロジャー・ケイスメントという、コンゴとアマゾンの先住民虐待を告発した人物がいたことを初めて知りました。
「(コンゴでは)ヨーロッパ人は黒人を騙し、搾取し、鞭打つばかりか、これっぽっちの良心の呵責もなく殺すことさえできるのです」。ヨーロッパ人とその手先たちは、山刀で先住民たちの手や性器を切り落としたり叩き潰すことまでしました。先住民を魂のない動物扱いしたのです。
アマゾンで行われていた、鞭打ち、拷問用の足枷や首枷をはめること、耳や鼻を削ぎ落すこと、手足を切り落とすこと、殺してしまうことなど、インディオたちが受けるさまざまな種類の罰が列挙されています。殺すにしても、首吊りにする、銃で撃ち殺す、焼き殺す、あるいは川で溺れ死にささせるというように、方法にはいくつもの種類がありました。非道にも、インディオを的にして射撃を行う例もあったというのです。また、残虐な扱いに耐え切れず反乱を起こした先住民の若き首長は針金で目玉をくり抜かれた上に、先住民たちの前で妻とともに生きたまま焼き殺されたという事例も記されています。
ケイスメントは、行方不明と思われていたデイヴィッド・リヴィングストンを発見したことで知られる探検家ヘンリー・モートン・スタンリーの下で働いた経験があるのです。「ロジャー・ケイスメントは、自分の子ども時代、青年時代を通じての英雄が、西欧がアフリカ大陸に送り込んだ最も恥ずべき悪党の一人であると考えるようになっていた」。スタンリーは、アフリカ各地で村落を焼き、略奪を行い、先住民を撃ち殺し、荷担ぎの先住民の背中をカバの木の革で作った鞭で打ち据え、アフリカ中の黒檀色の身体に無数の傷跡を残したのです。「連中(先住民)の知能は君(ケイスメント)や私(スタンリー)よりワニやカバに近いのだ」と言い放つ始末です。
スタンリーは強欲なベルギーのレオポルド二世自らの指示を受けて、コンゴ植民地開発に邁進していたのです。
ケイスメントは、後に、コンゴが舞台の小説『闇の奥』で知られることになるポーランド人の青年ジョゼフ・コンラッドとコンゴで知り合い、親しくなります。13年後、コンラッドはケイスメントに、「君の助けがなければ決して(『闇の奥』は)書けなかっただろう。君は僕の目から目やにを拭き取ってくれたんだ。アフリカのこと、コンゴ自由国(実態は植民地)のこと。そして人間の姿をした獣のこと」と語りかけています。
ケイスメントが同性愛者であったことにも言及されています。
確かな読み応えのある作品です。