金井美恵子の魅力に気づかなかった迂闊者の私・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3488)】
カワラヒワ(写真1、2)、ヒヨドリ(写真3)、水浴びするスズメ(写真4)、水浴びするムクドリ(写真5)をカメラに収めました。ノブドウ(写真6、7)が実を付けています。
閑話休題、ネット読書会「読書の森」で、金井美恵子の『カストロの尻』と『愛の生活』について、「気を取り直して、私なりの書評を書こうと努めたが、どうしても書けませんでした。どうも、この作家とは相性がよくないようです」と書いたところ、メンバーの高橋裕幸氏から、「個人的には、金井美恵子さんは存命している日本の作家の中で一番好きです。「目白4部作」などは比較的読みやすいですよ」というコメントが寄せられました。
高橋氏のアドヴァイスに従い、「目白4部作」の『小春日和(インディアン・サマー)』(金井美恵子著、河出文庫)を手にしました。
読み始めてすぐに、私の大好きな庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』を始めとする「庄司薫」4部作との共通点に気づき、ぐんぐん引き込まれてしまいました。そして、金井が私と同世代ということもあって、物語の環境というか風俗や雰囲気が馴染み深いものばかりなのです。
19歳の私立の女子大生の桃子は、小説家の叔母宅に居候することになり、同級生の花子という親友ができます。この3人の日常生活がユーモラスに、あるいは辛口で描かれていきます。
「何をやりたいの? 何って、まだそんなことわかんない。おばさんを見てると小説家が気楽そうでいいなあって思いはするけどね。そりゃあ、そうよ。気楽なもんだわよ。将来性はない分野だけどね」。
「あたし、思わずはっとしたんだ。あたしって、もしかすると、おばさんに気に入られている花子に、シットというものをしてるんじゃないかって、ね。あたしって、ワリとそのての心理分析癖があるんだよね」。
「あたし、花子のことかあいそうになって、あんなおやじを持つと恥しいだろうけど、後になってみれば、あたしのほうがね、自分のおやじに関しては複雑な思いを持つことになったわけなのだ。女に性的イヤガラセをする男と同性愛者を父親に持つのと、どっちがヤバイと思う?」。
「私は、書物から自分のわかることしか読み取らない、唾棄すべきブルジョワ的自惚れに自足した読者なのだろうか(と同時に書き手でもある)?」。
結論を言うと、私は金井美恵子という作家の魅力に気づかなかった迂闊者ということになります。目を開かせてくれた高橋氏に感謝! 近日中に、「目白4部作」の『彼女(たち)について私の知っている二、三の事柄』を読む予定です。
誠に些細なことだが、金井に言いたいことがあります。作中に「荻窪のオデオン座」という洋画専門の映画館が登場するが、これは「阿佐谷のオデヲン座」じゃありませんか。私は荻窪育ちで、オデヲン座は大好きな映画館でした。