本当の幸せって何だろう・・・【山椒読書論(59)】
『ブータンの言葉――世界でいちばん幸せな国』(早乙女響著、日本文芸社)は、ちっちゃな冊子であるが、世界で一番幸せな国といわれるブータンについて、いろいろなことを教えてくれる。
ブータンの人口は約69万人で、島根県に住む人たちとほぼ同数。その人口密度は北海道の約4分の1――「みんながゆったり暮らすことができるのが、ブータン王国です」。
ブータンのGDP(国内総生産)は僅か14億ドルで、世界161位。――「でも国民の幸福度ランキングを見ると、ブータンは世界8位。それに対し、日本は90位。日本では眉間に皺を寄せている人が目立ちますが、ブータンの人たちには笑顔があります。その秘密がGNH(国民総幸福量)という考え方」。
――「東日本大震災の翌日――。ブータンでは国王主宰で『被災者の安全を祈祷する式典』が開催され、100万ドル(約7700万円)もの義援金が日本に送られました。GDPから換算すると、日本が41億ドル(約3100億円)を支援したのと同じこと。ブータンは、私たち日本人の不幸を見過ごすことができなかったのです。ありがとう、ブータン」。
――「ブータン料理は『世界一辛い料理』といわれています。でも、外国人には辛さを抑えた料理を出してくれます」。
ワンチュク国王は、2011年10月13日、ジェツン・ペマさんと結婚。――「結婚後の最初の外遊で訪れたのは日本でした。国賓として来日したワンチュク国王は、王妃とともに福島県相馬市を訪問。『原発近くの被災地へ行きたい』というご本人の強い希望でした」。
――「国王は、『ブータンは一夫多妻制だが、私の妻は生涯ひとりだけ』とおっしゃったそうです」。
――「最近人気なのが、バスケットボールとサッカー。衛星放送が受信できるようになり、若者たちが海外のスポーツを目にしたことがきっかけでした。サッカーは、2002年6月30日に当時FIFAランキング202位だったブータン代表が203位のモントセラト代表と最下位決定戦を行い、勝利したことも人気沸騰の一因」。
――「農家には、冬の住居を持っている人たちがたくさんいます。夏は北で田畑を耕し、収穫が終わると家畜を連れて南へ移動します。だから、かさばるものは持たない主義です。家具はなく、自分で持ち運ぶことができる籠が全財産。ものに縛られて身動きの取れない私たち日本人を、まるで哀れんでいるかのよう。ブータンの人たちはシンプルライフの達人です」。