これこそが、短篇小説の醍醐味だ・・・【山椒読書論(93)】
【amazon 『雨・赤毛』 カスタマーレビュー 2012年10月31日】
山椒読書論(93)
『雨・赤毛』(ウィリアム・サマセット・モーム著、中野好夫訳、新潮文庫)に収められている『雨』と『赤毛』は、短篇小説の醍醐味を味わわせてくれる。物語性を重視したギ・ド・モーパッサンの衣鉢を継ぐウィリアム・サマセット・モームの面目躍如である。
短篇『雨』は、任地へ向かう途上で南海の小島にとどめられた、あまりにも職務に熱心な宣教師が、たまたま同じ宿に泊まり合わせた自堕落で肉感的な娼婦を何とか改心させようと躍起になる物語。間断なく重く降り続く長雨を背景に、驚くべき結末を迎える。
超短篇『赤毛』は、南海の島で出会い、一目で恋に落ちてしまった赤毛で美しい白人青年と現地のこれまた美しい娘の物語。28年後に想像を絶する事実が明かされる。
モームの短篇に敬意を表して、私も短評を心がけてみた次第である。