少年院を退院した少年Aの居所を、被害女児の母親に密告した少年Bとは誰か・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3672)】
端午の節句が近づいてきましたね。
閑話休題、『目には目を』(新川帆立著、KADOKAWA)の結末には、あまりの意外さに唖然としてしまいました。
思い罪を犯し、少年院で出会った6人。この中に、10歳の女児を殺した15歳の少年Aが含まれていました。
17歳で退院したAは、被害女児の母親によって刺殺されてしまいます。18歳でした。母親は、Aと同じ時期に少年院で過ごした少年Bの密告の手紙、「xx年x月x日、午後四時半、Y建設の社員寮、xx号室に犯人はいます。北の裏口はいつもあいています。そこから、しきちに入ってください」によって、Aの居所を知ることができたのです。
密告した少年Bとは誰なのか、どうして密告したのか――本書は、仮谷苑子が、これらの疑問を解明すべく、退院した少年たちを訪ね歩いてまとめた証言集です。
被害女児の母親は、情報を得るために、SNSに次のような文章を投稿していました。「xx年x月x日、S県T市xx町三丁目―十六 中央東公園内で、娘の有海(あみ)、十歳が無惨にも首を絞められ、殺されました。犯人をさがしています。犯人は、犯行当時十五歳の少年でした。そのために、氏名も顔写真も公開されず、N少年院で一年三カ月をすごしただけで釈放。今ものうのうと生きています。情報求む。有益な情報には謝礼二百万円」。麦わら帽子をかぶってニッコリと笑う有海の写真が添えられていました。
読み終えて暫くは呆然としていたが、冷静さが戻ってくると、レフ・トルストイの『アンナ・カレーニナ』の有名な書き出し、「幸福な家族はどれも似通っているが、不幸な家族は不幸のあり方がそれぞれ異なっている」(この一節だけ、私が英語から重訳)を思い浮かべてしまいました。少年少女たちが罪を犯す前に、思い止まらせるために何かできることがあるのではないかと思うのだが・・・。