榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

現代の最も目立つ哲学者、マルクス・ガブリエルの基本概念を知ることができた・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3871)】

【読書の森 2025年10月28日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3871)

早朝、水遣りをしていた我が家の庭師(女房)が駆け戻って来て、緑色で光沢のあるカメムシがいるわよ、と。駆けつけてみるとツヤアオカメムシでした。ドジャースvsブルーウェイズのワールド・シリーズ第3戦を、初めから延長18回のサヨナラ・ホームランまで見てしまいました。6時間39分に及んだ死闘は球史に残ることでしょう。

閑話休題、インタヴュー集『時間・自己・幻想――東洋哲学と新実在論の出会い』(マルクス・ガブリエル著、大野和基インタヴュー・編、月谷真紀訳、PHP新書)のおかげで、現代の最も目立つ哲学者、マルクス・ガブリエルの基本概念を知ることができました。

●私たちの人生は庭師になるためにある
生命のしるしはすべて植物が基本だというのです。

●ニヒリズムとモダン・ニヒリズムの違い
「ニヒリズム」が、すべてのものに「肯定的な核」などなく、否定の連鎖によって成立しているのだと捉える概念であるのに対し、ガブリエルの言う「モダン・ニヒリズム」は、生まれる前の私は無である、死後の私は無である、その中間の私は一つの肉体、欲求を持つ肉体であるという考え方だと解説しています。これはオントロジー(存在論)、消費主義の存在論だというのです。

●「世界」に囚われず生きる
ガブリエルの「新実在論」とは、世界は存在しない、世界とは最新のプロパガンダによるイデオロギー上の産物にすきないという認識に立った考え方だと説明しています。

ガブリエルが提唱している「新実存主義」は、世界なしにどう生きるかという哲学理論だと説明しています。

●嫉妬という大罪
嫉妬は非常に大きな問題だ、なぜなら、自己愛性パーソナリティ障害をはじめ、職場に害をもたらすのは、形はさまざまでも結局、嫉妬から生じているからだというのです。

●人間にとって宗教は必要か
ガブリエルは、この問いに対し、完全にイエスと答えています。ニヒリストは、「生まれる前は自分は存在せず、今生きていて、やがていなくなる」と考えるが、これは誤りだというのです。もしニヒリズムが誤りならば、私たちは宗教を論じる必要があると述べています。

ガブリエルの死に対する考え方、宗教に対する考え方が分かったので、今後、彼にどう対応すればいいのかがはっきりしました。私は、死や宗教に対する考え方はその人の自由で、他人がどうこういうものではないと弁えているが、まさに、ガブリエルのいう「生まれる前は自分は存在せず、今生きていて、やがていなくなる」という考え方の持ち主であり、「だからこそ、生きている間は充実した人生にしたい」と願っている人間だからです。

この書評を書き上げてから、ChatGPT5に「マルクス・ガブリエルの哲学のポイントについて280字で教えてください」と頼んだら、このような答えが瞬時に返ってきました。「マルクス・ガブリエルの哲学の中心は、『新実在論』にあります。これは『世界』という全体は存在せず、無数の『意味の場』があるという考え方です。科学・宗教・芸術など、それぞれの領域が独自に現実を構成しており、真理は一元化できないとします。従来の実在論と相対主義を超え、『多元的な実在』を認めるのが特徴です。また、人間の自由と責任を強調し、倫理的な思考を哲学の中心に据えています」。