Z世代の頭の中を覗いてみよう・・・【MRのための読書論(240)】

Z世代の本音
Z世代と付き合う必要のある人は誰でも、Z世代の頭の中を覗けたら、何とか対応できるのにと思っていることだろう。そういう人にとって、『Z世代の頭の中』(牛窪恵著、日経プレミアシリーズ)は必読の一冊である。本書には、Z世代1,600人の本音が満ち満ちているからだ。
Z世代の特徴
●「3年で3割の若者が辞める」は本当か。本当だが、正確に言えば、3割どころか35%だ。Z世代に多いとされる「タイパ(タイムパフォーマンス、時間対効果)」志向が、彼らを早期離職や転職へと向かわせている。労働環境に大きな問題はなく、表面的には居心地がよいものの、「ゆるい」職場(いわゆる「ゆるブラック」)であるために成長実感が持てないといったことも若者たちが辞めてしまう理由になっている。
●いつ何が起こるか分からない状況にさらされてきた彼らだからこそ、Z世代は一刀流でなく「二刀流、三刀流」で、多方面のスキルや能力を身につけ、人として成長し、未来に向けて可能性の幅を維持または拡大せねばと考える。その影響で、「恋愛や結婚」、あるいは「家族や出産」に可能性を制限されたくないと考える。Z世代は「自分をアップデイトしなければ」との危機感が、非常に強い世代なのだ。
●彼らは、なぜ、自分をアプデできないと不安なのか。彼らが「VUCA=Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)」の時代を生きてきたからだ。早ければ2029年にも到来するのではとも言われる「シンギュラリティ(AIが人間の知性を超える転換点)」などの影響で、今の自分の仕事が奪われてしまうかもしれない、何をどう努力し、どう備えればいいのか分からない、という思いが根底にあるのだ。
●Z世代は「多少失敗しても、やり直せる」と考えている。「スマホネイティヴ」でもある彼らは、アプリのように、最初から完璧を目指さなくてもいいと考えやすい。多くは、まず着手してみて、完成手前の「β(ベータ)版」を提示し、周囲から意見をもらいアプデしていくとのスタンスである。
●コロナ禍を含め、青春時代に不確実性が高い時代を生きてきた彼らの多くは、「いかに『長期的』に資源を運用、有効活用すべきか」と考えやすい。
●若い世代の間で、あれほど「年収103万円の壁」を巡る熱狂が見られたにもかかわらず、20代の6割超が、投票行動に出ていない。こうした結果が、「日本の若者は結局、政治に無関心だ」と、上の世代を落胆させている。しかし、投票率が低いことと政治無関心は、同義ではない。「貧乏クジ世代」とも呼ばれる団塊ジュニア、すなわち氷河期世代を親に持つZ世代(氷河期二世)は、「なぜ日本はこうなった?」、「中国にGDPで抜かれるなんて」や「あのときもっと、日本政府がしっかりしていたら」といった不満や、「自分たちが社会を変えたい」、「もう一度、ニッポンを輝かせたい」との思いが強い。
●近年は、一度も恋愛経験がない「未恋」の若者が増えている。彼らは「恋愛をしたいのにできない」のではなく、「恋愛はコスパが悪い」、「恋愛は面倒」で「割に合わない」、だから「あえて手を伸ばさない」と考えているからだ。Z世代にとっては、恋より趣味や推し活が重要なのだ。また、「仕事と恋愛はトレードオフ(両立できない)」と考えている。
●Z世代の男女共8割以上が結婚願望を持っているが、5割弱が子どもはほしくないと答えている。「子どもは贅沢品」、「自分のことで精いっぱい。少子化対策に貢献する余裕はない」と考えているのだ。
●若者の「クルマ離れ」や「アルコール離れ」は本当か。金を使わないのではなく、モノから「コト」へ、さらに「イミ」へ、所有から「利用」へと、「使い方」が変ったのである。Z世代は「節約・倹約」がベースにありながらも、興味ある分野には惜しみなく金を使う「メリハリ消費」が驚くほど顕著なのだ。
●今やZ世代の男性にとっては美肌も脱毛も当たり前の日常になりつつある。
Z世代との付き合い方
以上を踏まえて、Z世代とどう歩んでいくべきか。そのキーワードが2つ挙げられている。
① 「多様」を「個別」に落とし込む。
② 「古い」を「新しい」に活かす。
このキーワードの具体的な施策が、仕事、消費、恋愛(婚活)・結婚・出産の3分野別に提示されている。
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