愛する人が超天才から知的障碍者へ逆戻り――あなたなら、どうする?・・・【山椒読書論(241)】
【amazon DVD『アルジャーノンに花束を』 カスタマーレビュー 2013年7月27日】
山椒読書論(241)
「キニアン先生があのひとたちわぼくのあたまをよくしてくれるかもしれないといった」。
サイエンス・フィクション(SF)『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス著、小尾芙佐訳、早川書房、ダニエル・キイス文庫)の主人公、32歳のチャーリイ・ゴードンは、幼児レベルの知能しかなかったが、脳外科手術を受けることによって超天才へと劇的な変貌を遂げる。チャーリイが指導を受けた知的障碍者成人センターの教師アリス・キニアンが「このごろ、あなたとは話ができないのよ。あたしにできるのは、耳をかたむけて、うなずいて、文化的変異でもブール数字でも記号論理学でも、みんなわかったようなふりをすること」だけと嘆くほどの進歩ぶりだ。しかし、先行して同じ手術を受けたアルジャーノンという名のマウスが驚異的な知能を得たのち、短期間のうちにその知能を失っていくのを見て、チャーリイは自分の行く末を知ってしまう。今では、チャーリイとアリスは互いに深く愛し合っているというのに――あなたなら、どうする?
この作品のSF要素は知能指数を高めるための手術という発想だけで、その他は現代の通常の生活が描かれているので、私はSFというより、哀切さが心に染みる心理小説と受け止めている。
映像で味わいたい向きには、DVD『アルジャーノンに花束を』(ラルフ・ネルソン監督、クリフ・ロバートソン、クレア・ブルーム出演、JVCエンタテインメント。販売元品切れだが、amazonなどで入手可能)を薦めたい。