榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

資産防衛の本命は、証券会社が売りたがらない米国債だ・・・【山椒読書論(245)】

【amazon 『証券会社が売りたがらない米国債を買え!』 カスタマーレビュー 2013年7月30日】 山椒読書論(245)

近未来に日本国債が暴落し、円が暴落し、国家財政が破綻する、否、そうはならない、と議論がかまびすしい。それぞれの立場から書かれた本が書店の書棚をぎっしりと埋めている。

これらの書籍の中で一番説得力があるのは、『証券会社が売りたがらない米国債を買え!――絶対減らしたくない、でも増やしたい人のための資産運用術』(林敬一著、ダイヤモンド社)である。

著者の主張は、単純明快だ。●日本国債の将来はかなり危ないが、国家財政破綻まではいかないだろう、●しかし、財政破綻までいかない場合でも、国債の暴落と円の暴落(円安)によって国民の資産は大打撃を受ける、●それは、私たちが直接、国債を購入していなくても、銀行、郵貯が私たちの預貯金を国債で運用しており、年金資金も大部分が国債で運用されているからである――というのだ。

それでは、私たちが資産を防衛するにはどうすればいいのか。著者の回答は、「長期投資に本当に強いのは、証券会社が儲からないので売りたがない米国債だ」と、実にシンプルで、はっきりしている。リタイア世代は、長期(できれば30年物)の米国債(利付債)を購入して、元本を減らすことなく、毎年、安定した利益を稼ぎ、長生きリスクに備えよ、一方、働いている現役世代は、長期(できれば30年物)の米国債(ゼロ・クーポン債<割引債>)を購入して、複利運用で資産を大きく殖やし、老後に備えよ――とアドヴァイスしている。

リタイア世代が30年という長期の米国債を買ったら、償還日(満期日)が来る前に死んでしまうではないかと心配になるが、生涯、毎年、かなりの利息が得られるし、その時点で残存部分を売却すればいいというのが、著者の考えだ。

米国債に対する不安には、全てに丁寧な説明がなされている。その上、米国債は購入手数料不要、信託報酬不要、売却手数料不要、償還までの利回り確定なのだ。為替のリスクについてはどう考えるか。今後、円安に動けば円での取り分が増え、円高になれば円での取り分が減ることになる。円高になった場合も、長期的に見れば、満期まで確定している高利率から生じる利益が為替差損を補って余りあるというのだ。著者は、「日米間の金利差は為替リスクに負けない」と胸を張っている。

早速、N證券に行ってみたら、著者の言うとおり、手続きは簡単であった。