幸運の女神の前髪を掴む方法・・・【続・リーダーのための読書論(23)】
笑顔の好青年
25歳の最年少マザーズ上場社長として脚光を浴びている村上太一を、満面に笑みを湛えた好青年と表面的に捉えることは、問題がある。『リブセンス<生きる意味>――25歳最年少上場社長 村上太一の人を幸せにする仕事』(上阪徹著、日経BP社)を読めば、そのことが明らかとなる。
最年少上場記録を更新したことは快挙ではあるが、村上の本当の凄さは、その考え方と行動にある。起業を目指す若者のみならず、企業内で一段上を目指そうという若者にとっても、「読まないと損」、これは、そういう本である。
万全の準備
常日頃から周到な準備をしておき、ある日、突然、出現する幸運の女神の微笑みを見逃さない、この意味で、村上は少年時代から準備に抜かりがないのである。これだけ完璧に準備されてしまったら、依怙贔屓と謗られようと、女神も村上の前に佇まざるを得ないだろう。
例えば、中学・高校時代の試験直前2週間の集中的勉強、大学受験を心配しなくてよい早稲田大学高等学院への進学、高校3年の時に起業の準備を始め、早大政治経済学部1年生での創業、それから5年後の上場――と、高い目標に向けて、常に準備怠りなく、スケジュールどおり段取りよく進めてきたのである。
最も印象的なのは、起業の第一歩となる早大のヴェンチャー・コンテストでの優勝を目指した入念な準備と、ここまでやるかというほどの行動である。「やっぱり競争ですから、敵の強さも把握しておかないといけない」と、ライヴァルの敵情視察と、その対策に猛然と取り組んだのだ。
柔軟性
何事にも、「高い目標を定め、段取り力を発揮し、綿密なスケジュールを作り、着実に実行していく」のが村上流であるが、●これではうまくいかないと判断したら思い切って、虎の子のビジネス・モデルであろうと修正する、●アルバイト情報サイト「ジョブセンス」の求人企業への「成功報酬型」、求職者への「採用祝い金」という画期的な村上モデルを模倣した100社を超える競合企業の参入にも慌てず騒がず、強かに手を打つ、●「ジョブセンス」の成功に安んずることなく、新規事業を次々と立ち上げる――といった柔軟性も併せ持っている。
戻る | 「第7章 仕事にロマンを」一覧 | トップページ