榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

絵本『えんとつ町のプペル』を大ヒットさせた、恐るべき商売人の頭の中・・・【続・リーダーのための読書論(78)】

【ほぼ日刊メディカルビジネス情報源 2018年1月9日号】 続・リーダーのための読書論(78)

恐るべき商売人

『えんとつ町のプペル』の成功は、絵本としては桁外れである。この仕掛け人が西野亮廣であるが、彼は芸人、絵本作家である以上に、怪物のような恐るべき商売人である。その考え方は型破りで、構想力、組織力、実行力は群を抜いている。しかも、その手の内を『革命のファンファーレ――現代のお金と広告』(西野亮廣著、幻冬舎)で明かすことによって、さらに稼ごうという強かさには舌を巻く。ビジネス・マインドを持つ者にとって、西野の頭の中がどうなっているのか興味津々である。

えんとつ町のプペル

「僕は去年(=2016年)、『えんとつ町のプペル』という絵本を発表したんだけれど、この作品の制作に費やした時間は4年半だ。これは、芸人としての収入があったから可能だったわけで、絵本作家一本で活動していたら、4年半も収入が途絶えてしまうような作品の制作には手を出すことができない。・・・『結局、何がやりたいんだ! 一つに決めろ!』という常識に従っていたら、生まれてこなかった作品だ」。

「『えんとつ町のプペル』を作る際のクラウドファンディングは2度実施して、支援者数が9550人。支援額が5650万4552円」。お金は信用を数値化したもので、クラウドファンディングは信用をお金化するための装置だと、著者は断言している。

「絵本『えんとつ町のプペル』で、これまでの絵本と大きく変わった点は、作り方を『超分業制』にしたということ」。「スタッフはクラウドソーシング(外注)で集め、総勢35名。僕が物語を書いて、絵コンテを描いて、残りはチームで」。

「2017年1月19日。『えんとつ町のプペル』の発売から、まもなく3ヶ月が経とうとしていたその日。僕は、『お金の奴隷解放宣言』と題して、インターネット上で『えんとつ町のプペル』の全ページを無料公開した」。「無料公開は、騒ぎになるまで吉本興業の社長も、幻冬舎の社長も知らなかった。下っ端の僕らだけで無料公開の決定をしたのだ」。直後は日本中から非難の声が上がったが、結果を見ると、無料にしたことでさらに売り上げが上がったのである。基本的なサーヴィスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については課金するビジネス・モデルが成功したのである。

君への檄

「感情に支配されず、常識に支配されず、お金に支配されず、時代の変化を冷静に見極め、受け止め、常に半歩だけ先回りをすることが大切だ。船底に穴が開き、沈んでいく船の、『まだマシな部屋』を探してはいけない。最後に水に浸かる部屋を奪い合ってはいけない。今の状況を正確に捉え、生き延びることが大切だ」、「キミの人生の決定を、他人や環境や時代に委ねるな。キミの人生はキミが決定しろ。常識に屈するな。屈しないだけの裏付けを持て。それは行動力だ。それは情報量だ」という著者の檄が、身に沁みる。