これからの行政のあるべき姿とは、菅内閣によるデジタル化の問題点とは・・・【続・リーダーのための読書論(92)】
コロナ禍
『新・大前研一レポート――日本を変える83の政策提案+新章「コロナ禍で露呈した行政の問題とあるべき姿」(緊急復刊版)』(大前研一著、masterpeace)で注目すべきは、「コロナ禍で露呈した行政の問題とあるべき姿」の章である。
これからの行政のあるべき姿
著者は、これからの行政のあるべき姿として、5つの提言を行っている。
①国民全員がIDを持ち、一元的に管理するコモンデータベースの構築。著者が提案するコモンデータベース法は、「国民一人一人が生まれた瞬間から個人情報をすべてデータベース化し、国家が一括して管理・保護する」ことを目的としている。
②コモンデータベースを委ねる厳正中立な第四権「人権府」の設置。「私は、立法、行政、司法の三権分立に、第四権力として『人権』を加えることを提案します。行政、立法、司法が、コモンデータベースを自分たちの都合のいいように使うことがないよう、第四権力である『人権府』がそれを監視するという構造です」。
③国民目線で行政サービスを統合したデジタルガバメントの構築。「『デジタルガバメント』とは、行政のデータ管理や手続きにおいて、デジタルを活用して国民により利便性の高いサービスを提供できる政府のシステムです」。
④最先端の知識を持つ民間のIT技術者を閣僚に抜擢。
⑤「スーパーシティ構想」の展開。「『スーパーシティ』とは、AIやビッグデータを活用することで、これまで社会で課題とされてきた問題をすべて解決し、より利便性の高いいわゆる『未来都市』を実現させようというものです。具体的な取り組みとしては、自動走行による移動・配送サービス、完全なキャッシュレス化、行政手続きのデジタル化、遠隔授業、遠隔医療、エネルギーのコミュニティ内での循環などが挙げられています」。
菅内閣によるデジタル化の問題点
菅内閣で進めようとしているデジタル化の問題点が5つ指摘されている。
①デジタル担当大臣が専門家ではない。
②マイナンバー制度を見直さないまま利用範囲を広げようとしている。
③ハンコの廃止だけを進めようとしている。
④デジタルガバメントの全体像が見えていない。
⑤デジタル時代に向けての「教育」の方針が打ち出されていない。
大前研一は現状批判の段階に止まることなく、具体的な代案を提唱しているので、強い説得力がある。大前の主張に賛成でない場合も、議論の叩き台として有用である。