一流MRの原点回帰・・・【MRのための読書論(18)】
原点回帰
日々のMR活動に追いまくられているMRと、忙しい中にあっても、時には立ち止まって自分を振り返る余裕のあるMRとでは、仕事の達成度・完成度にかなりの差が生じてくる。原点に回帰することによって、自分の盲点に気づき、改善策を学ぶことが可能になるからである。
説明力の点検
MR活動は多種多様の仕事から成り立っているが、基本中の基本は、やはりターゲットのドクター・薬剤師に対する日々の情報提供だろう。原点に立ち返り、自分の説明力を点検しようとする時、『あたりまえだけどなかなかできない説明のルール』(鶴野充茂著、明日香出版社)が役に立つ。
1つのルールが2ページにまとめられ、全部で101のルールが示されているが、説明力にある程度自信のあるMRでも、「なるほど、こういう場合はこうすればいいのか」と思い当たることが多いと思う。
●「説明する前にシナリオを用意しよう」というルールでは、ストーリーでなくシナリオというところが味噌である。ストーリーを用意して臨むMRは多いだろうが、よりきめの細かいシナリオを用意すべきだというのだ。
●「説明する前に相手の答えを予想しよう」、「聞かれる以上の情報を用意しておこう」、「説明する時にはメモを用意しておこう」といったルールは、説明が成功するか否かは、準備で80%決まってしまうからだ。私は、説明・依頼したい事項が多い場合は、1、2、3・・・と箇条書きにしたメモを2枚用意するようにしている。メモを見ながら、事前に立てた作戦の順番に沿って説明・依頼していく。全ての説明・依頼が終わった段階で、「本日、ご説明、お願いしたかったことは、この5項目でございます」と、もう1枚のメモを手渡すことによって、相手の理解をより深めることができるからだ。
●「要約→背景→ポイント→判断、の流れをつかもう」、「締め切りをはっきりさせよう」、「つまり一言でいうと? を常に考えよう」、「先に結論:まず、どうしてほしいのかを先に言おう」、「はじめに、話したいことがいくつあるかを伝える」というルールは、どれだけ余計なことを言わずに、相手に大切なメッセージを伝えることができるか、という考え方に立っている。重要人物ほど忙しいのが常だから、私は、気候の挨拶等は一切抜きで、最初から「本日は5件、ご報告、お願いしたいことがございます」と切り出すことにしている。
●「Yes・Noで答えられるような質問で締めくくろう」、「次のステップを自分から提案しよう」、「次のアポまでの宿題を自分から提案しよう」といったルールは、クローズィングが苦手なMRの参考になるだろう。さらに、「説明したら、内容確認のメールを送ろう」というルールもぜひ実行すべきだ。私も、訪問から帰ったら、直ちにお礼メールを送るようにしているが、これは内容確認メールを兼ねているのである。
営業力の点検
原点に立ち戻り、自分の営業力を点検しようとする時、強力な助っ人となってくれるのが『人間系ナレッジ・マネジメント』(山本藤光著、医薬経済社)である。これは、本来、部下のMRの営業力をとことん高めることを目的として、営業リーダー向けに書かれた本であるが、一流MRを目指しているMRにとっても必読の書である。
私が、この本をMRに薦める理由は3つある。第1は、内容の全てが、33歳で総務部購買係長から自ら望んでMRに転身した著者の苦闘→成功→出世→左遷→プロジェクト成功→合併→早期退職→独立という実体験に裏打ちされていること。第2は、方法論が一般的、総花的でなく、「製品ファイルの作成・活用」といったように具体的かつ簡潔明瞭であること。第3は、MRの身で、自分がこれからなるであろう営業リーダーの視点でMRの営業力を見ることができること。
著者は、「優秀MRと平均的MRの違いを一言で表現するなら、仕事に対する貪欲さとなろう。貪欲とは、なりふり構わず何でもありということではない。『RPDCサイクル』を、的確かつ迅速に回すということなのだ」と述べているが、正にそのとおりだ。また、著者は、MR活動のスキルを「インプット(知識)」、「プロセス(ターゲティング)」、「プロセス(アクセス)」、「プロセス(ディテーリング)」、「アウトプット(成果)」に分解して、それぞれのベスト・スキルを明示している。
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