MRと営業リーダーの共創戦線がMRのレベルを向上させる・・・【MRのための読書論(96)】
総決算の書
『MRの「質を測るものさし」あります――強い営業チームには良質な共通言語がある』(山本藤光著、エルゼビア・ジャパン)は、著者にとって「総決算」の書だ。これまでの豊富な体験を踏まえ、この10年間に、著者の頭脳から絞り出された「MRはどのようなステップを踏んでレベルをアップさせるべきか」、「営業リーダーはそのために何をなすべきか」のエッセンスが凝結している。
質の勝負、人間力の勝負
「良質なMR活動」「質の高いMR活動」を実現するには、理想的なMR像、理想的な営業リーダー像、理想的なチーム像を、MRと営業リーダーが共有し、共創に向けて協働することが必要となる。
著者は、「MR活動は質が勝負」であり、そのためには「質を測るものさし」が必須と考え、そのものさしの作り方を伝授しようとしているのだ。
優秀なMRは、顧客ニーズ・ウォンツの把握、効果的なアクセス時間・場所の選択、ドアオープナーの活用、空気を読む力、気配り、明るさ、質問力、熟成した話法、学術資材の活用、顧客満足度の高め方、タイミングのよいクロージング力などに長じているが、著者が一番重視するのは、人間力である。
MR活動を推進するに当たっては、「『RPDC』を毎日回す」ことが基本となる。著者が提唱する「RPDC」は、「R:毎日1つ以上の新たな発見をする。P:毎朝成果を思い描いてMR活動をスタートする。D:失敗を恐れず、勇気をもって挑戦する。C:新たな発見と挑戦の結果を明日の活動の糧にする」というものである。「MR活動に、毎日起伏を与えるのが『RPDCサイクル』です。今日が明日につながらなければ、進歩はおこりません。『RPDC』を頭のなかで転がしているだけでは、効果が希薄になります。大学ノートを1冊用意します。各ページを十文字で分割し、毎日記録をとりつづけると、かならず今日とは違う明日が生まれます。今日よりもちょっぴり輝いている明日です」と励ましている。
また、人間力を高めるには、会社に頼るだけでなく、自己投資をして、自分を磨けと叱咤激励している。「『知』は正直ものです。どんなに虚勢をはっても、底の浅さはすぐに見抜かれてしまいます。知は努力すればするほど、レベルアップしてきます」。そして、知を磨くための教材として、「優れた人」と「良書」を挙げている。
営業リーダーの役割
MRが毎日回すのが「RPDCサイクル」なら、営業リーダーが回すのは「SECI(セキ)プロセス」である。「S:Socialization(共同化)――「現場」でMRと同行していて、自らやってみせ(暗黙知)同じようにやらせてみます(暗黙知)。E:Externalization(表出化)――「会議」でMRに成功例(暗黙知)を発表(形式知)させます。C:Combination(結合化)――「会議」での発表(形式知)がすんだら、それをチームメンバー全員でディスカッションして(形式知)、よりよいものに改善します。I:Internalization(内面化)――みんなが練り上げた成功例(形式知)を、それぞれのMRは「現場」で実践(暗黙知)してみます」と、具体的かつ実践的なプロセスになっている。
チームに「共創」を生み出すためのツール、MR活動のレベルを向上させるためのツールが9つ紹介されている。①1枚ペラのベストプラクティス、②身の丈コンピタンシー、③メモリアル病院、④PPF(Past、Present、Future)話法、⑤ドクター専用茶封筒、⑥情報タワー、⑦ストップモーション紙芝居、⑧初恋の教室、⑨人間力を高めるアレコレ――これらの多彩なツールは、著者の成功体験の結晶と言えるだろう。
モナリザと白雪姫
営業リーダーにとって、著者の「モナリザ・チェック」は、大いに役に立つ。「モ(MRに向けた視点):モチベーションは上がっているか。ナ(チームに向けた視点):ナレッジは循環しているか。リ(自分に向けた視点):リーダーシップを発揮しているか。ザ(仕事に向けた視点):定冠詞『ザ』がつくような仕事をしているか」。 さらに、「モ」の視点に立つときは、「白雪姫はだいじょうぶかな」と呟くというのだ。「白:シラーっとしていないか(主に業績の悪いMRにたいして)。雪:ゆきづまっていないか(若手のMRにたいして)。姫:悲鳴をあげていないか(がんばり屋のMRにたいして)」。
戻る | 「MRのための読書論」一覧 | トップページ