榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「片づけ」、それは人生を変える一番身近でシンプルな方法・・・【MRのための読書論(53)】

【Monthlyミクス 2010年5月号】 MRのための読者論(53)

片づけとMR

片づけができているMRは身の回りや思考が整理されているので、仕事をこなすスピードが速く、仕事のクウォリティも高い。片づけができているMRと、できていないMRとの差は初めのうちは僅かだが、やがて取り返しのつかないほどの格差が生じてしまう。

片づけと人生

たった1分で人生が変わる片づけの習慣』(小松易著、中経出版)は、読み終わると片づけがしたくなる不思議な本である。

身の回りを片づけると、人生が好転し始める、と著者は断言する。片づけは夢を叶える舞台づくりだという。片づけの基本動作が身についている→素早く優先順位をつけることができる→迅速に決断し、処理することができる→仕事や私生活で成功する、というわけだ。さらに、片づけが習慣になっていると、前段階で時間を取られず素早くスタートが切れるので、チャンスをものにする確率が高くなる。チャンスが訪れたときに自分の持っている力を最大限に発揮することができる。

一方、片づけができていないと、モノ、スペース、ヒトが死んでしまう。捨てられずにしまい込まれて役割を果たしていないモノは死んでいる。不要なモノが占めているスペースは死んでいる。そのスペースは違う用途に使えるはずだから。片づけができていないと、ヒトが生かされず、死んでしまう。出会えたはずのヒトと物理的に、あるいは時間的に出会えないということが起こり、出会いの機会を失うからだ。これらは個人にとどまらない。組織レヴェルでもモノ、スペース、ヒトの死をもたらし、作業効率を低下させるから始末が悪い。

片づけの方法

片づけとは整理と整頓だ。整理は「モノを減らす(捨てる)こと」、整頓は「モノを使い易いように配置すること」である。片づけを始めると最初の壁――何を捨て、何を残すか――にぶつかる。何が必要で、何が不必要かの線引きができない人は、人生において何をしたいのかが明確になっていない人だ、と著者の指摘は厳しい。取捨選択ができないので、いつの間にかモノや情報に埋もれてしまうというのだ。

著者は、片づけは身近な机から始めよとアドヴァイスする。片づけの成果がすぐに出る机から始めることで、小さな成功体験を味わえるからだ。片づけの基本動作は「出す→分ける→減らす→しまう」の4段階である。片づけ時間を15分と決めたら、先ず、その時間内に全ての基本動作を終えられる範囲のモノを外に「出す」。次に、要るモノと要らないモノに「分ける」。ほかで入手可能か否かを、「分ける」基準にすべきだという。次の「減らす」では、要らないモノを捨てるか、人にあげるか、売るかする。「いつか使うかもしれないから取っておこう」という悪魔の囁きに耳を貸さず、勇気を奮って「減らす」のがコツだ。最後の「しまう」で、要ると認定したモノを元の場所に戻す。モノの使用頻度を考慮して「しまう」と使い易くなる。さらに、「保管」と「保存」の違いを意識するよう勧めている。「保管」は「必要なときにすぐに取り出せるように一時的にしまうこと」、「保存」は「日常的に使うことがないモノを長期的にしまうこと」である。

仕事の書類を片づける場合は、「作業中」「保管」「保存」「廃棄」の4つに分けて考える。現在進行中の仕事の書類は「作業中」として、すぐに取り出せる場所にしまう。いったん役目を終えた書類は「保管」とし、何かあったらすぐに取り出せる場所にしまう。日常的に使うことのない書類は「保存」とし、机以外の場所にしまう。書類作成に使った資料やメモなど、もう使い道のないものは即刻「廃棄」する。

片づけを習慣化することで、探すという無駄な時間を省くことができ、不必要なモノは買わなくなるので無駄なマネーを使わなくなる。片づけができていると、身の回りや頭の中がスッキリするので余分なストレスがなくなり、余裕が生まれ、いろいろなアイディアが湧いてくる。さらに、片づけによって空いたスペースに新しいモノ、情報、チャンスを取り入れることができる。