榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

君は、人工知能、機械学習、ディープラーニングの違いを、一言で言えるか・・・【MRのための読書論(138)】

【ミクスOnline 2017年6月16日号】 MRのための読書論(138)

全体像

最近のICTの進化は目まぐるしく、ちょっと目を離すと、遥か後方に置いていかれてしまう。君は、人工知能、機械学習、ディープラーニングの違いを、一言で言えるか。『グーグルに学ぶディープラーニング――人工知能ブームの牽引役 その仕組みをやさしく解説』(日経ビッグデータ編、日経BP社)を開けば、不思議なほど、これらのことがすっきりと頭に入ってくる。

全体像を俯瞰的に眺めると、人工知能という海に、機械学習という島が浮かんでいる。その島で生まれ、急成長している生物がディープラーニングである。

人工知能

人工知能(AI)は、本書では、「知的な情報処理をするもの、またはその技術」と定義されている。

機械学習

基本的な機械学習では、画像や音声、テキストなどのデータを「入力」として用意する。一方で、コンピューターが出す答えに相当する「出力」を、入力に対応する形で用意する。この入力と出力のセットを大量に用意し、コンピューターに学習させていくことを機械学習と呼ぶ。このコンピューターの中で、入力から出力を得るための計算のプロセスをモデルと呼ぶ。機械学習とは、入力と出力のセットからモデルを作り上げることを意味している。「機械が答えを出すための手法を、人間がプログラムとして与えるのではなく、機械が自動的に膨大なデータから学習してモデルを作るのが、機械学習」。

機械学習で扱われるモデルには、「決定木」「帰納推論」「ニューラルネットワーク」「ディープラーニング」など多くの種類がある。

ディープラーニング

ニューラルネットワークとは、機械学習の一つの手法で、人間の脳の神経細胞を模式化したシステムである。ディープラーニング(深層学習)は、ニューラルネットワークを多層化したものである。「ニューラルネットを、多段に重ねて処理する手法がディープラーニング」。機械は1段の処理では簡単な結果しか導き出せないが、この処理の層が深くなる(ディープになる)ことで、複雑な処理が行えるようになるのだ。

ニューラルネットワークやディープラーニングは、人間が「答え」を教えることはあるが、「解き方」は教えない。「人間が解き方を教えるとなると、最大でもその解き方を教えた人間のレベルまでの仕事しかできないわけです。しかし、コンピューターが自分で解き方を考えると、人間を超える可能性も出てくることになります。与えられたデータから、人間では考えもつかなかったような答えを導き出すこともあるのです。ディープラーニングが注目されていることの一つの理由は、人間を超える可能性にあるともいえるでしょう」。

「『ディープラーニングが、ルールベースの人工知能や他の機械学習と異なるのは、とても単純であることです。ディープラーニングの構成を定める必要はありますが、あとは大量のデータで機械学習させるだけで、答えを導き出すモデルを作ってくれるからです』。ディープラーニングが注目されるのは、複雑な処理をする人工知能を、比較的簡単で単純な手法で構築できるからなのです」。

本書では、最近、新聞などメディアを賑わせている「スマート・スピーカー」など、グーグルのディープラーニング活用事例、実際に機械学習やディープラーニングをビジネスに取り入れた日本企業の事例も紹介されている。

ディープラーニングがあれば何でも解決してしまうのだろうか。ディープラーニングが向く領域、向かない領域があると聞いて、正直言って、少しホッとした。「『これからは機械学習やディープラーニングが必ずさまざまな領域で広がってきます。エンジニアだけが知識を持っていればいいのではなく、ビジネスサイドの人もある程度は正確に把握していないといけないでしょう。どういうところには有効に使えて、どういう場面では使えないのか、機械学習やディープラーニングの本質を知っていないと、ビジネスチャンスを逃したり、だまされたりしてしまうかもしれません』」。