榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ウクライナ戦争、安倍晋三、LGBTQを考える手がかりを与えてくれる本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3069)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年9月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3069)

アゲハ(写真1~3)が6頭群れています。アオスジアゲハ(写真4)をカメラに収めました。

閑話休題、内田樹と白井聡の対談集『新しい戦前――この国の“いま”を読み解く』(内田樹・白井聡著、朝日新書)で、思わず大きく頷いてしまったのは、●ウクライナ戦争の展望、●安倍晋三の妄想とカリスマ性、●左派アカデミーの不可解な分類癖(LGBTQ)――の3つです。

●ウクライナ戦争

「どこの国も『先送り』しか手立てがないと思います。当事者全員が納得する『落としどころ』がないんですから。そういう場合は先延ばししかない。そのうち、誰かが死ぬことで解決するかも知れないし、『こんなことしてられない』というもっとスケールの大きな事件が起きるかも知れない。台湾情勢だって、先送りしているうちに、習近平が急死したら後継問題で台湾のことなんかは後回しになる。ひどい話ですが、プーチンが死ぬか習近平が死ぬかすれば、ウクライナも台湾も状況は一変します。みんな、黙ってそういう意外なゲームチェンジャーの登場を待っていると思います」。

●安倍晋三

「安倍さんは妄想的ではあれ、本気で『戦争ができる国』にする気でいた。大日本帝国の統治スキームに戻そうと本気で考えていた。彼の人気はその妄想のスケールの大きさにあったと思います。でも、その後の菅義偉前首相も岸田現首相も全く妄想的なタイプではありません。ただ単に安倍路線が成功したからというだけの理由で戦争シフトを踏襲している。でも、別に大日本帝国を再興するほどの気はない。政権が延命できればそれでいいという理由で安倍路線を引き継いでいる。安倍元首相が亡くなったあと自民党の求心力は急速に衰えていますが、改めて自民党の求心力は彼の個人技だったということがわかります。それだけのカリスマ性があった。・・・安倍さんは現行憲法を廃して、戦前型の軍事国家を再建してゆくことをはっきりとめざしていた。民主主義とか人権とか多様性とか、そういうものを全否定する安倍さんの思想に共感する人たちがそれだけいた」。

「自民党は世襲議員だらけですけれど、これがやはり自民党の政策構想力を致命的に殺いでいると思います。世襲議員は家業として政治家をやっているわけで、議席を保持することが最終目的です。別にせひとも実現したい政策があるわけではない。だから、そのつど党内の多数派にくっついて大臣ポストを得れば『上がり』という『世襲議員すごろく』を演じている。今の日本の指導層はあらゆる領域で世襲が幅を利かせるようになりましたが、それが日本の衰退の一つの理由だと思います」。そのとおりだ!

●LGBTQ

「左派のアイデンティテイ・ポリティクス(ジェンダーや人種、民族、性的指向、障害などについて特定集団の利益を獲得する政治活動)もかなり不可解なことになってきています。その行き過ぎにはいろいろな問題があります。たとえば、性的少数者の権利付与や権利主張を認めていこうというのはよいのですが、やはり性的な事柄は公共的なところに乗せることが要注意な話でしょう。しかし、ある時期からセクシュアリティに関する事柄が異常なまでに重きをなすようになってきた。そうした傾向の発信源のひとつがアカデミックな左派(文化左翼)です。・・・LGBTQに関して言うと、Tのトランスジェンダー(身体的性別と自己認識の性別が異なる人)とQのクイアー(もともと『変態』などの意味が用いられた)という分類から、より不可解になってきた印象です。特にトランスジェンダリズムの問題性は、最近の日本でも注目されるようになってきました。トランスジェンダリズムの核心には『性自認』の概念があります。この概念が大変に問題含みであって、要するに『自分の体は男あるいは女だけど、心は逆の性だ』という『自己認識』を基礎として、肉体的現実に認識を優越させることを意味します。当然のことながら、『それは単なる思い込みだろう』という批判が出てきます。・・・イギリスは国家的にそうした『治療』(=乳房や性器の切除)を推進していましたが、最近、政索を軌道修正しました。性器切除をしてもアイデンティティ・クライシスの悩みは必ずしも消えません。だから『とんでもないことをされた』と被害を訴える人たちが大勢出てきたわけです。同じことはアメリカでも起きています」。TとLGBは分けて考えるべきなのです。