自分も幕末の人間になったような気分にさせられる、下級武士の写実的な彩色絵日記・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3898)】
マガモの雄と雌とアオサギ(写真1)、マガモの雄と雌とダイサギ(写真2)、ダイサギ(写真3)、マガモの雄と雌(写真4)、セグロセキレイ(写真5)、ハクセキレイ(写真6)、シジュウカラ(写真7)をカメラに収めました。因みに、本日の歩数は7,192でした。













閑話休題、『幕末下級武士の絵日記――その暮らしの風景を読む(新訂)』(大岡敏昭著、水曜社)は、自分も幕末の人間になったような気分にさせられる一冊です。当時の武士、僧侶、町人、女性たちの生活ぶりが詳細かつ写実的に描き込まれた彩色の絵日記のおかげです。
江戸から北に約60km離れた忍(おし)藩松平氏10万石の城下(現・埼玉県行田市)に住まいする尾崎石城(せきじょう)という下級武士が書き記した『石城日記(7巻)』がそれです。
『石城日記』には、石城の自宅、中下級武士の友人宅、そして寺や料亭での武士、僧侶、町人たちのさまざまな暮らしの風景が、数多くの挿し絵とともに丹念に描かれています。石城の絵は、ほのぼのとしていて味わいがあります。下級武士たちの暮らしは非常に貧しかったが、それを弾き返すような闊達さやおおらかさがありました。そして、彼らには身分の垣根を越えた日常的付き合いがあったことが分かります。さらに、虐げられた者への、貧しい者への思い遣りと助け合いの心がありました。
思わず吹き出してしまうような滑稽で愉快な場面が多いのは、石城の優しくて、ひょうきんな人柄によるものでしょう。
この絵日記は、石城の非凡ともいうべき正確な観察力が土台になっています。
石城は、下級武士ながら学問好きで、藩に上書(意見書)を提出するという硬骨漢です。そのために、29歳(数え年)という若さで強制隠居という処罰を受けてしまうのです。この絵日記には強制隠居を命じられた文久元年6月から翌年4月までが記されています。石城は強制隠居にも屈せず、学問と武芸に精を出し、中下級武士の友人たち、寺や料亭の多くの人々と毎日のように交わり、日々の暮らしを淡々と、しかも愉快に楽しく生きています。何と、愛すべき人物ではありませんか。
