榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

名高い巫女(みこ)の住む岩山へ、多くの男たちがはるばる危険を顧みずにやって来ては・・・【ことばのオアシス(102)】

【薬事日報 2012年11月7日号】 ことばのオアシス(102)

名高い巫女(みこ)の住む岩山へ、多くの男たちがはるばる危険を顧みずにやって来ては、消してしまいたい過去の記憶を口移しで吸い取ってもらっている。

――飯田茂実

上掲はマルチ・アーティスト、飯田茂実の『一文物語集』(e本の本)に収載されているワン・センテンスの超短篇小説の全文である。

この本の中には、「知識をがつがつ吸収しようとして血走っているそのひとの眼に触れると、どんな本の活字も怯えて紙から逃げだしてしまい、あとには白いページしか残らない。」、「きっぱりと断られたのにも挫けず、なんとか弟子にしてもらおうと数年間その老人のあとを尾(つ)けまわして山奥へ踏み入り、ふたたび平伏して入門を願ったところ、青年のほうで初めから人違いをしていたことが判明した。」といった何とも不思議な世界が広がっている。