先生、私もミニ地球を作りたくなりました!・・・【山椒読書論(51)】
『先生、モモンガの風呂に入ってください!――[鳥取環境大学]の森の人間動物行動学』(小林朋道著、築地書館)は、自然に囲まれた小さな大学の森や池で著者や学生たちが遭遇した生物たちとの交流がユーモアたっぷりに綴られる「先生!シリーズ」の第6弾である。
第6弾ともなると、いささかマンネリになるのではと心配しながら読み始めたが、面白さは健在であった。
それどころか、今回は、新たな進展を見せているのである。著者らは、鳥取県ハ頭郡智頭町芦津の山村の森でニホンモモンガの観察を続けているのだが、この地区の住民と連携して、地域の活性化に乗り出したのだ。「思い立ったら、すぐ行動」を信条とする著者が、ニホンモモンガ、ニホンヤマネを初めとする、さまざまな生き物が棲息する芦津の森をアピールすることが地域の利益に繋がると呼びかけたところ、地区の人々から想像以上の反応が得られたのである。
著者の2つの狙い――「モモンガの森の野生動物たちの調査」と「モモンガの森の保全のための地域活性化」が見事に結び付き、早速、著者、学生、地区の人々が考え出したアイディアが実行に移される。
どのアイディアも面白いが、私が一番、興味を惹かれたのは、著者提案の「モモンガの森のミニ地球」である。ミニ地球というのは、掌に載るくらいの大きさの透明なプラスチックの円形容器の中に、地球の生態系を形成する「生産者(植物)」「消費者(草食動物)」「分解者(カビやキノコ)」を、土や水とともに入れて密封した、ミニ・ミニ・サイズの「地球」のことだ。著者が全く独自の試行錯誤の末に辿り着いたこのミニ地球には、遊び心と自然を楽しむ気持ち、そして、子供を含めた一般の人々に生態系の原理を理解してほしいという著者の願いが込められている。具体的には、先ず、プラスチック・ボール1つに土と枯れ葉を入れ、ごく小さな木(これがシンボル・ツリーになる)、草、コケ、ドングリや木の実などを植え込む。最後にダンゴムシを1匹入れ、もう1つのプラスチック・ボールをかぶせてパチッとはめ込めば出来上がり。水はやらなくていい。
食物連鎖とともに、窒素、リン酸、カリウム、炭素、酸素などが、植物→動物→分解者→植物・・・と循環し、水も、地面→空中、あるいは植物の体内→プラスチックの天井、あるいは動物→地面・・・と循環するというのだ。