榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本、特にノンフィクションは面白ければいいのだ・・・【山椒読書論(167)】

【amazon 『面白い本』 カスタマーレビュー 2013年3月28日】 山椒読書論(167)

面白い本』(成毛眞著、岩波新書)を読んで、この著者に親近感を抱いてしまった。というのは、著者が、ノンフィクション大好き人間で、本は何かの役に立つ必要はない、面白ければいいのだ、とはっきり表明しているからだ。全く同感である。

著者は122冊のノンフィクション(フィクションがごくごく一部含まれている)を推薦しているが、著者の「面白い本」と私の「面白い本」はかなり重なっている。

そうは言っても、著者の紹介が巧みなせいもあって、無性に読みたくなった本が結構ある。

例えば、『死海文書のすべて(新装版)』(ジェームス・C・ヴァンダーカム著、秦剛平訳、青土社)である。「タイトルどおり、文書の発見から旧約聖書の成立過程との関係、さらには、なぜいままでその内容が公正に発表されなかったかを学問的見地から解説している本だ」と言われたら、読まないわけにはいかない。

『ロゼッタストーン解読』(レスリー・アドキンズ、ロイ・アドキンズ著、木原武一訳、新潮文庫)は、「エジプト文明の解明の鍵を握る、エジプト古代文字ヒエログリフ解読をめざして、各国は血眼の競争に入ったわけである。その競争の真っ直中にいたシャンポリオンは、類稀な天才解読者であった。当時、だれにも理解できなかった、表音文字にして表意文字でもあるヒエログリフを、どうして彼だけが解読できたのか」と紹介されている。

『ハダカデバネズミ――女王・兵隊・ふとん係』(吉田重人・岡ノ谷一夫著、岩波科学ライブラリー)は、「タイトルのとおり、無毛で、出っ歯なネズミが主人公。ときにキュート。だが、よく見ればかなりグロテスクなこの生き物が生物言語学の扉を開くという、一級の科学読みものなのである」。「なんと彼らは『パピプペポ』を発音することができ、歌も唄う。さらには自分よりも階級が上のネズミには特定の鳴き声を多用し、まるで人間社会の『すみません』のような表現で、目上の者と下の者を分けるというのだ」。ここまで書かれたら、ハダカデバネズミの世界を覗かないではいられない。

『からのゆりかご――大英帝国の迷い子たち』(マーガレット・ハンフリーズ著、都留信夫・都留敬子訳、近代文藝社)の「調査に乗り出した彼女(著者)は、組織的な児童移民によって送り出された児童が13万人に及ぶこと、されに彼らは現地での過酷な労働、修道士からのすさまじい性的虐待にさらされていた事実を突き止める」。

読書は道楽、こう割り切っている人には、絶好のガイドブックである。