やはりノンフィクションは面白いなあ・・・【山椒読書論(458)】
『面白い本』(成毛眞著、岩波新書)の続篇ともいうべき『もっと面白い本』(成毛眞著、岩波新書)を読んで感じたことが、3つある。
第1は、やはりノンフィクションは面白いということだ。著者は、「まずは人間から」、「世界を俯瞰する」、「歴史という迷宮」、「アートな読書」、「サイエンスとは謎解きだ」、「揃えておきたい本」の各章で、これはというノンフィクション70点を採り上げている。一冊ずつの書評は短いが、簡にして要を得ていて、思わず読んでみたくなる仕掛けが凝らされている。本によっては、短い引用が添えられているので、原著の雰囲気が伝わってくる。
著者同様、私も現在の読書はノンフィクション中心であるが、私が読んで面白いと思った本と著者の薦めているものがかなり重複していて、その一致率の高さにびっくりしてしまった。と言っても、当然、私の未読の本もたくさん紹介されているので、そのうちの何冊かを「読むべき本リスト」に早速、加えたところである。
第2は、本書によって、これまで知らなかったことを知るという愉しみだ。例えば、『人体探求の歴史』(笹山雄一著、築地書館)で言及されている、「女性の涙に含まれる男性ホルモンを低下させる物質」とか、『世にも奇妙な人体実験の歴史』(トレヴァー・ノートン著、赤根洋子訳、文藝春秋)に登場する奇人、ジョン・ハンターが、『ドリトル先生』や『ジキル博士とハイド氏』のモデルとして知られているとか、『イラスト・図説でよくわかる 江戸の用語辞典――時代小説のお供に』(江戸人文研究会編、善養寺ススム・イラスト、廣済堂出版)の、「【てやんでぃ】→『何を馬鹿なことをいってやがるんでぃ』の略でございます」、「【すっとこどっこい】→『すっとこ』は『裸男』という意味でございます。『どっこい』は『どこへ行く』という意味で、『裸でどこへいくんだ?』という、馬鹿、慌て者、礼儀知らずを申します。が、下町言葉ですんで、基本的には勢いでして、口可笑しいだけで、深意なぞあまりなく使います」という箇所とか。
我が家では、以前から、女房とふざけて、語呂のいい「てやんでぃ、すっとこどっこい、ひっこんでろい」という言葉を、右手で鼻を擦り上げる仕種とともに愛用しているのだが、本書のおかげで、このいなせな言葉の理解が格段に深まったと、女房ともども喜んでいる。
第3は、「ネット書評家(本のキュレーター)」の現在と未来が示されていて、参考になったことだ。趣味で書評を書き散らしている私にとっては、大いに勉強になったのである。