江戸時代の妖怪たちが勢揃いした絵本・・・【情熱的読書人間のないしょ話(285)】
我が家の小坊主は、私のようにダイエットのための糖質制限食を実行していないので、餅は食べ放題です(笑)。
閑話休題、『絵でみる 江戸の妖怪図巻――江戸の人々が恐れ愛した異界のもの一二三七種』(善養寺ススム文・絵、江戸人文研究会編、廣済堂出版)には、江戸時代の1237種の妖怪たちが勢揃いしています。
江戸時代には、なぜこんなに多くの妖怪が存在したのでしょうか。「それは、いたって簡単な理由で、現代ではその仕組みがわかっている『地震』『雷』『蜃気楼』といった自然現象や、『病』、『夜行性の動物』も、当時は謎だったものがほとんどです。それらの天変地異に注意を促す意味でも、妖怪や怪異は生まれ、人々は口づてや、書物、瓦版などで広めていったのです。それに、古い時代の『神話』など、権力者や寺社の話題作りや権威付けに作られたお話、『掟』のような宗教的・社会的ルールの補完的な怪談・奇談なども加わって、江戸時代はさながら、妖怪の大博覧会でございました」。
「江戸時代に入ると、妖怪や怪異を怖がるだけでなく、楽しむようになりました。それまで、鬼や神、怨霊、魑魅魍魎だのと言われていたものを、『妖怪』に統合し、名前をつけてキャラクター化したのが江戸時代なのです。つまり、『妖怪』は江戸生まれなのです」。
私にとってとりわけ興味深いのは、「座敷童(わらし)」です。「座敷童は陸奥国(岩手県)を中心に全国で信じられている家の妖怪。座敷や蔵に棲み、その家の繁栄を守っていると言われる。おかっぱ頭の幼児が最も多く、家によっては15歳くらいの子供もいる。また、老婆の場合もあり、性別も一定していないし、複数が現れる家もあるという。座敷や土間で、幼い子供と遊ぶが、糸車や紙、板戸を鳴らすなど悪戯もする。座敷童が消えた家は、衰退したり火事や災害に見舞われるという」。
「人面瘡(そう)」は、こう説明されています。「化膿した傷が人面になるという病。人面瘡はやがて飲み食いを始め、治療には人面瘡に貝母という薬草の粉末を直接飲ませるという」。
「化け猫」は、全国各地で活躍したようです。「猫も狸と同じ夜行性で、夜に思わぬところから姿を現したり、高みから目だけを光らせ、じっと人を見るなど、夜が真っ暗だった江戸時代には、特に怪しく思われる行動をする。そのため、『猫を殺すと化けて出る』『年を経た猫の方が化け猫になり、人に化けたり、立って踊ったり、言葉をしゃべったりする』『山に潜み、狼を従えて旅人を襲う』『祟りを及ぼす』『死体を操る』『人に憑く』などなど、様々な伝承を生んだ」。
我が家にも長らく住み着いている「貧乏神」は、「江戸時代の妖怪ブームで、随筆や落語などに登場し、大人に好まれた妖怪キャラクター。家に憑いて、無気力、無関心、無感謝の怠け者にして、貧乏にさせる神」だそうです。一日も早く立ち去ってほしいものです。
「疫病(やくびょう)神(厄病神)」は、こういうものだそうです。「疫病や不景気を広める悪い神。伝染病を広める時には、一軒一軒姿を現し、病にかけて行くという。一般的に老人の姿をしている」。
「雪女」は、「雪の夜に現れる白装束の女の妖怪」ですが、「各地にさまざまな伝承がある」とのことです。雪女には出会ってみたい気もします。
何とも愉しめる一冊です。