榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

人類の歴史に大きな役割を果たしてきた植物たち・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1453)】

【amazon 『世界史を大きく動かした植物』 カスタマーレビュー 2019年4月12日】 情熱的読書人間のないしょ話(1453)

ベニバナトキワマンサクが桃色の花をまとっています。その若い葉は赤みを帯びているが、段々緑色に変化していきます。アオキの雌花と雄花は形状が異なっています。ロドレイア・ヘンリーが赤紫色の花を下向きに咲かせています。アネモネの薄紫色の花が揺れています。さまざまな色合いのアイスランドポピーが咲き競っています。ミズナが黄色い花を付けています。キャベツが元気に育っています。ユリノキの集合果が目を惹きます。因みに、本日の歩数は10,281でした。

閑話休題、『世界史を大きく動かした植物』(稲垣栄洋著、PHPエディターズ・グループ)は、人類の歴史に植物が大きな役割を果たしてきたと主張しています。

「人類は植物を栽培することによって、農耕をはじめ、その技術は文明を生みだした。植物は富を生みだし、人々は富を生みだす植物に翻弄された。人口が増えれば、大量の作物が必要となる。作物の栽培は、食糧と富を生みだし、やがては国を生みだし、そこから大国を作りだした。富を奪い合って人々は争い合い、植物は戦争の引き金にもなった。兵士たちが戦い続けるためにも食べ物がいる。植物を制したものが、世界の覇権を獲得していった。植物がなければ、人々は飢え、人々は植物を求め、植物を育てる土地を求めて彷徨った。そして、国は栄え、国は滅び、植物によって、人々は幸福になり、植物によって人々は不幸になった」。

●コムギ――一粒の種から文明が生まれた。「あるとき、私たちの祖先は、人類の歴史でもっとも『偉大な』発見をした。突然変異を起こした『ヒトツブコムギ』との出合いにより、私たちは狩猟生活を捨てて農耕を選択する」。

●イネ――稲作文化が「日本」を作った。「戦国時代の日本では、同じ島国のイギリスと比べて、すでに6倍もの人口を擁していた。その人口を支えたのが、『田んぼ』というシステムと、『イネ』という作物である」。

●コショウ――ヨーロッパが羨望した黒い黄金。「ヨーロッパでは家畜の肉が重要な食料であったが、肉は腐りやすいので保存できない。香辛料は、『いつでも美味しい肉を食べる』という贅沢な食生活を実現する魔法の薬だった」。「ヨーロッパの人々にとってコショウは、手に入りにくい高級品であった。コショウは南インド原産の熱帯植物なので、中東のアラブ地域やヨーロッパでは栽培することができない。そのため、インドから陸路はるばる運ぶしか手に入れる方法はなかったのである。そのため、多額の輸送費が掛かるし、無事に運べるとは限らないから、どうしても高価になる。しかも、コショウがインドからヨーロッパに来るまでには、アラブ商人やベネチア商人を経由しなければならなかったし、通行税も課せられたから、価格は跳ねあがった。そのため、コショウは驚くほど高価だったのである」。香辛料となる植物が熱帯に多く、ヨーロッパに生えない理由は、香辛料が持つ辛み成分は、もともとは植物が、気温が高く、病原軌や害虫が多い熱帯地域でそれらから身を守るために蓄えているものであり、一方、冷涼なヨーロッパでは害虫が少ないからです。

●トウガラシ――アメリカ大陸で発見したトウガラシを「ペッパー(コショウ)」と呼ばざるを得なかったコロンブスの苦悩とアジアの熱狂。

●ジャガイモ――大国アメリカを作った「悪魔の植物」。「アイルランドでは突如としてジャガイモの疫病が大流行。大飢饉によって食糧を失った人々は、故郷を捨てて新天地のアメリカを目指す。移住したアイルランド人の子孫の中から成功者が輩出する」。当初、ヨーロッパ人がジャガイモを「悪魔の植物」と呼んだ理由は、芋は無毒だが、芽や緑色に変色した部分はソラニンという毒を含む有毒植物だからです。

●トマト――世界の食を変えた赤すぎる果実。「世界で4番目に多く栽培されている作物がトマトである。アメリカ大陸由来の果実が、ヨーロッパを経てアジアに紹介されてわずか数百年の間に、トマトは世界中の食文化を変えていった」。

●ワタ――「羊が生えた植物」と産業革命。「18世紀後半のイギリスで、安価な綿織物を求める社会に革新的な出来事が起こる。蒸気機関の出現により、作業が機械化され、大量生産が可能になった。これが『産業革命』である」。それまでヨーロッパで主に用いられていたのは、羊毛などを使った毛織物でした。ヨーロッパの人々は、羊が果実のように生える植物があるのだと想像したのです。ワタはそれほど不思議なものだったのです。

●チャ――アヘン戦争とカフェインの魔力。「神秘の飲み物=紅茶を人々が愛すれば愛するほど、チャを清国から購入しなければならない。大量の銀が流出していくなか、イギリスはアヘンを清国に売りつけることを画策する」。

●サトウキビ――人類を惑わした甘美なる味。「手間のかかる栽培のために必要な労力として、ヨーロッパ諸国は植民地の人々に目をつける。そして、アフリカから新大陸に向かう船にサトウキビ栽培のための奴隷を積むのである」。

●ダイズ――戦国時代の軍事食から新大陸へ。「中国原産のダイズから生まれた味噌は、徳川家康と三河の赤味噌、武田信玄と信州味噌、伊達政宗と仙台味噌など、戦国時代に栄養豊富な保存食として飛躍的に発展を遂げていく」。

●タマネギ――巨大ピラミッドを支えた薬効。「古代エジプトで重要な作物であったタマネギの原産地は、中央アジアである。乾燥地帯に起源をもつタマネギは、害虫や病原菌から身を守るために、さまざまな物質を身につけた」。

●チューリップ――世界初のバブル経済と球根。「オランダは東インド会社を設立し、海洋交易で資産を蓄えており、オランダ黄金時代の幕開けの時期だった。そして、人々は余っていた金で球根を競って買い求めたのである」。

●トウモロコシ――世界を席巻する驚異の農作物。「トウモロコシは単なる食糧ではない。工業用アルコールやダンボールなどの資材、石油の代替品となるバイオエタノールをはじめ、時代はトウモロコシなしには成立しない」。

●サクラ――ヤマザクラと日本人の精神。「ソメイヨシノが誕生したのは江戸時代中期である。日本人は、けっして散る桜に魅入られてきたわけではなく、咲き誇るヤマザクラの美しさ、生命の息吹の美しさを愛してきた」。

本書のおかげで、いろいろと学ぶことができました。