榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

アルツハイマー病は、ねじれた異常タンパク質が周囲を巻き込んでいく・・・【山椒読書論(316)】

【amazon 「日経サイエンス2014年1月号」 カスタマーレビュー 2013年11月28日】 山椒読書論(316)

日経サイエンス2014年1月号」(日経サイエンス社)に掲載されている「認知症のタネをまくタンパク質」(L・C・ウォーカー、M・ジャッカー著、田中元雅訳)には、アルツハイマー病などの神経変性疾患に関して、驚くべきことが書かれている。

「プリオンに似た変性プロセス」が、「●狂牛病などの感染症は、異常な形をしたプリオンタンパク質が、正常なプリオンタンパク質を異常な形に変えることによって起こる。ノーベル賞の対象となった発見だ。●これと同様のプロセスが、アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった主要な神経変性疾患でも起こっているようだ。ただし、これらの疾患がヒトからヒトに感染することはない。●タンパク質がいかにしてねじれ、正常なタンパク質を異常な形に変えるようになるかを理解することは、世界の主要な神経変性疾患の予防法や治療法の開発につながるだろう」と解説されている。

アルツハイマー病などの神経変性疾患の多くは、ねじれて異常な形に変わったタンパク質が、近くの同種のタンパク質を同じように変形させる連鎖反応を開始させることによって発症するというのだ。アルツハイマー病では、こうしてミスフォールド(誤った折り畳み方)したアミロイドβ(Aβ)タンパク質がシード(種)となって神経細胞を傷つけ、最終的に破壊する大小のタンパク質凝集体を作るプロセスを開始させる。

高齢者の認知障害として最も一般的なアルツハイマー病は、密かに表れ、何年もかけて容赦なく進行し、記憶や人格、最終的には命をも奪う。アルツハイマー病の発症率は、65歳を過ぎると5年毎に倍増し、85歳までにおよそ3人に1人が発症するといわれている。予防法、治療法の一日も早い解明を望むや切。