スキャンダラスな変身物語・・・【山椒読書論(399)】
【amazon 『めす豚ものがたり』 カスタマーテビュー 2014年1月28日】
山椒読書論(399)
『めす豚ものがたり』(マリー・ダリュセック著、高頭麻子訳、河出書房新社。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、スキャンダラスな変身物語である。
香水店で客たちへのセクシュアル・サーヴィスの仕事をしている、若い娘である「私」は、いつの間にか、雌豚に変身してしまう。豚になると、辛いことや、惨めな思いをさせられることが多いのも事実だが、一方では、「私は、自分の運命に不満はない。食べ物はおいしいし、心地良い空き地がある。私は、なるがままにまかせていることが多い。朝起きたときの自分の周りの暖かい土。腐植土の匂いと混ざり合った自分の体の臭い。こうしたものに勝るものは何もない」と安らぎを感じている。
かつて彗星のように文壇にデビューした著者はエリート女性ということだが、評論家のように、その創作意図をあれこれ穿鑿するよりも、想像力を膨らませて味読すべき本だと思う。