榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

街角で飛び込んできた金髪の美女・・・【山椒読書論(409)】

【amazon 『ダイアナ・クラール ライヴ・イン・パリ』 カスタマーレビュー 2014年2月4日】 山椒読書論(409)

ある夕暮れ時、大型書店から出て来た途端、金髪の美女が飛び込んできた。私の目に、私の心に。書店の脇でオーディオ・セットの出張販売が行われており、その大型モニターの中で、その女性が歌っていたのである。

暫く見とれ、聞き惚れていたが、友との待ち合わせ時刻に間に合わなくなりそうだったので、慌てて出張販売の男性に尋ねたところ、「ダイアナ・クラール」という答えが返ってきた。

早速、購入したDVD『ダイアナ・クラール ライヴ・イン・パリ』(ヤマハミュージックアンドビジュアルズ)は、ジャズには門外漢である私にとっても痺れるように魅力的な作品であった。

ジャズ・ヴォーカリストそしてピアニストであるダイアナ・クラールの清潔な美しさ。情感を湛えた歌声。軽やかなピアノのタッチ。金髪を掻き上げたり、振り払ったりする仕種。共演者――アコースティック・バス、ドラム、ギター、オーケストラなど――への敬意と親近感。必要最小限にとどめた観客への語りかけ。パリのオリンピア劇場の観客の一員になったかのような臨場感。ダイアナ・クラールに出会えて、本当によかった。

「All Or Nothing」「Let’s Fall In Love」「Cry Me A River」「I Get Along」「A Case Of You」など、どれも素敵だが、彼女が尊敬しているナット・キング・コールを偲んで歌った「Love Letters」は素晴らしい。しつこいようだが、ダイアナ・クラールという歌手の存在を知ることができて、本当によかった。