榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

童話なのに、大人の男女の愛が直截に語られているロシア民話・・・【山椒読書論(594)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年10月26日号】 山椒読書論(594)

おばけのババヤガー ――ロシア民話』(カロリコフ再話、カバリョーフ絵、宮川やすえ訳、岩崎書店)は、童話なのに、大人の男女の愛が直截に語られている。

「むかし むかし、かあさんをなくした 三人のむすめが いました。いちばんしたの むすめは、マリューシカといって、びじんで はたらきものでした。二人の ねえさんは、一日じゅう なにもしないで、ペタペタ おけしょうをしたり、ほおべにを ぬったり・・・。おひゃくしょうの おとうさんは、マリューシカが とても じまんでした」。父親が自慢するだけあって、マリューシカは性格がいいだけでなく、なかなかの美形である。

「マリューシカは、みんなが ねてしまうと、はねを ゆかに なげました。すると、すばらしい わかものが あらわれました。あさになると、わかものは からだを ゆかにうちつけ、たかにかわって とんでいきました。三日のあいだ、マリューシカは こうして よるになると、たかの王子さまと いっしょに すごしました。いじわるな ねえさんたちは、それに きがついて、四日めに するどい ナイフを そっと まどわくに むすびつけ、かくれて みていました。たかは とんで きましたが、なかに はいれません。きずだらけになって さけびました」。マリューシカの何とも大胆な行動には驚かされる。

「『ぼくに あいたくなったら、三ぞくの 鉄のくつを はきつぶし、三ぼんの 鉄のつえを つきへらし、三つの 鉄のぼうしが やぶれるほど とおくまで たずねておいで』。うとうとと ねむっていた マリューシカは、そのこえに はっと めがさめました。でも、たかのすがたは もう みえません」。父親に頼み込み、マリューシカは、鷹の王子に会うため、長い旅に出る。その姿の凛々しく可愛いこと!

途中、おばけのババヤガーたちに助けられ、どうにか、城で女王に眠り続けさせられている王子に会うことができたのだが、王子は目を覚まさない。

「マリューシカは わっと なきだしました。そのなみだが 『ぽとり』と 王子さまの かたに おちました。『あつい』 王子さまは 目を さましました。みると、そばに マリューシカが たっているでは ありませんか。二人は しっかり だきあって キスをしました。つぎの日、二人は 王子さまの くにに かえるしたくを しました。女王さまは おこって、みんなを あつめました。たかの王子さまは、大きなこえで いいました。『おかねで 夫を うろうとした 女の人と、とおくから たずねてきた 女の人と、どちらが ぼくを あいして いるでしょうか!!』。人びとも、マリューシカの ほうが 王子さまを あいしていることが わかりました」。

「王子さまは くににかえると、けっこんしきの 大パーティーを ひらきました。それから 二人は なかよく くらした、ということです」。ああ、よかった!