榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

曽祖父、祖父、父と、3代続けて42歳で自殺した血筋の男の物語・・・【山椒読書論(644)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月28日号】 山椒読書論(644)

コミックス『人間交差点(17)』(矢島正雄原作、弘兼憲史作画、小学館文庫)に収められている「水面の華」は、曽祖父、祖父、父と、3代続けて42歳で自殺した血筋の男の物語である。

赤塚クリニックでの会話。「ははは。今泉、それは杞憂だよ。そんなことはないさ」。「親友のおまえだから打ち明けるけど・・・実は寺に行って過去帳を調べてもらった。そしたら父と祖父ばかりか、曽祖父まで42歳の年に自殺しているんだ」。「3代続いて42歳で自殺している・・・だから自分もそうなるんじゃないかっていうわけか」。「あながち偶然の一致とは思えない」。「因果関係があるとすればこうだ。つまり、おまえのオヤジさんは、2代続けて父と祖父が偶然42歳で死んだのを異常に気にしてしまった。そして自分も42歳になったので、死ぬのではないかという強迫観念にとらわれ、その結果、うつ状態になってしまった・・・」。「うつ状態がこうじて、うつ病になり、自殺した・・・ということか」。「そういうことだ。考えすぎることが死につながってしまったんだ。おまえもつまらないことを気にしないことだ。ある年齢に達したら発作的に自殺するなんてことは医学上、考えられない」。

42歳になった今泉に何が起こったか・・・。