榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

気分がとげとげしくなっていると自覚したとき、手にするコミックス・・・【山椒読書論(653)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年1圧30日号】 山椒読書論(653)

気分がとげとげしくなっていると自覚したときは、書斎の書棚からコミックス『たんぽぽさんの詩(うた)――ほのぼの家族まんが(1)』(西岸良平著、祥伝社)を引っ張り出してくる。

主人公は駆け出しのイラストレイターのたんぽぽさん、夫の慎平ちゃんはカメラマンの卵。それに、可愛い一人娘のスミレちゃん、家族になり切っているネコのトラという顔触れ。彼らが、さまざまな騒ぎを引き起こすが、西岸(さいがん)良平の独特な筆致が、ほのぼのとした雰囲気を醸し出している。

例えば、「旦那さまは芸術家!」は、こんなふうに展開する。

たんぽぽさんが出席した高校時代の親友の結婚式の披露宴は、まるで同窓会のようで、友人たちの自慢話が飛び交う。「たんぽぽの旦那さまは何してたっけ?」。「ええ、あの・・・カメラマンなんだけど・・・」。「わあ、すごいわねぇ!」。「カメラマンっていえば芸術家じゃないの!!」。「ねえ、教えてよ。なんていう名前? あたし知ってるかもしれないわ」。「・・・えーと、山田慎平っていうんだけど。知らないでしょう。うちの人あんまり仕事をたくさんしないから・・・芸術家タイプで良心的であんまりチャチな仕事はとらないの」。そこへドタドタと駆け込んできたのは、結婚式場から披露宴の撮影を頼まれたカメラマンの慎平ではないか。「やあ! たんぽぽじゃないか。友だちの結婚式ってここだったのかい!」。友達の手前、たんぽぽさんは赤面する。

最後の一齣が堪らない。「慎平さんが撮った結婚式の記念写真では、たんぽぽさんが一番美人に写っていた・・・」。