榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

戦争とは残酷なものだ・・・【山椒読書論(796)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年6月14日号】 山椒読書論(796)

第二次世界大戦下のイタリア。ジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、ナポリの海岸で恋に落ち、結婚する。アントニオは徴兵逃れの仮病がばれて、ソ連との戦いの最前線に送られ、行方不明になってしまう。何年経っても戻らないが夫は生きていると信じるジョバンナは、終戦後、アントニオの写真一枚を手がかりに、アントニオを捜しに単身、ソ連を訪れる。漸く捜し当てた所で、ジョバンナが目にしたのは・・・。

何年ぶりかで、1970年に製作されたイタリア映画『ひまわり』(DVD『ひまわり』<ヴィットリオ・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ出演、エスピーオー>)を見て、3つのことを感じた。

第1は、戦争について、愛について、別離について、運命について、人間について――深く考えさせられる作品であること。

アントニオがジョバンナに言う「戦争とは残酷なものだ。本当にひどいものだった。実に過酷で、実に悲惨だった」という言葉に胸が締めつけられた。先日、見返した映画『シンドラーのリスト』で、オスカー・シンドラーがシンドラーの工場経営の右腕であるユダヤ人のイザック・シュターンに「戦争は常に人間の最悪の部分を引き出す」と語る言葉を想起してしまった。

第2は、スクリーンいっぱいに広がって揺れる黄色いひまわりが、視覚的に強烈な印象を与えること。

ひまわりはウクライナの国花だ。ロシアのウクライナ侵攻が一日も早く終わることを祈るや切。

第3は、ヘンリー・マンシーニの抒情的な音楽が耳から離れないこと。