我が家の愛すべき訪問者たち
【にぎわい 2006年12月10日号】
我が家の愛すべき訪問者たち
我が家を訪れる昆虫たちの中で特に興味深いのは、アリジゴクとカネタタキである。アリジゴク(蟻地獄)は頼りなげにヒラヒラと飛ぶウスバカゲロウの幼虫である。春から夏にかけ、出窓の下の乾いた土にすり鉢状の穴を掘って底に潜んでいて、滑り落ちてくるアリをヤットコのように頑丈な大顎で捕らえ栄養分を吸い尽くす。自然界ではそうそうアリにはありつけないから、すり鉢の中に次々とアリを放り込んでやると、パニックを起こす。
庭木の辺りでチッチッチッチッと仏壇の鉦(かね)を叩くような音をたてるのは、コオロギの仲間のカネタタキ(鉦叩き)だ。じっと耳を澄まさないと聞き取れないほど微かな音が、秋が近づいていることを教えてくれる。時には室内にもお出ましになるが、心静かにその音に聞き入っていると、つい時間の経過を忘れてしまう。
春から秋にかけて、毎晩、律儀に出勤してきて、キッチンや浴室の網戸やガラスの外から白い腹を見せてへばりついているのは、トカゲに似た爬虫類のヤモリ(ニホンヤモリ、守宮<やもり>)である。指の裏が特殊な構造をしているので、ペタッと吸い付くことができるのだ。じっと動かずに待ち構えていて、カやガが明かりに引き寄せられてくると素早くパクッと食らいつく。指定席にヤモリの姿が見えないと、今日は体の具合が悪いのだろうかと気になってしまうほど、文字どおり我が家の家守(やもり)のような存在である。そして、たまに子ヤモリが室内に出没するのだが、そのかわいらしさと言ったら。
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