若者を挑発する天才的アジテイターの過激な一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(23)】
寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』に煽られたわけではないのですが、朝から、書を置いて、千葉県柏市・野田市・流山市の「利根運河の生態系を守る会」のタカの渡り観察会に参加しました。本日(2014年9月28日<日>)は快晴で、渡りに好都合の風に恵まれたため、2時間の間に、サシバ36羽、ツミ1羽が遥か東南アジアを目指して、元気に渡っていきました。その上、サシバ、ツミといった渡りをするタカの仲間だけでなく、オオタカ、ノスリ、チョウゲンボウ、トビなど渡りをしないタカの仲間たちが上空を旋回するのを観察することができました。
話は変わりますが、我が家を訪れる昆虫たちの中で特に興味深いのは、アリジゴクとカネタタキです。アリジゴク(蟻地獄)は頼りなげにヒラヒラと飛ぶウスバカゲロウの幼虫です。春から夏にかけ、出窓の下の乾いた土にすり鉢状の穴を掘って底に潜んでいて、滑り落ちてくるアリをヤットコのように頑丈な大顎で捕らえ栄養分を吸い尽くします。自然界ではそうそうアリにはありつけませんから、すり鉢の中に次々とアリを放り込んでやると、パニックを起こします。
庭木の辺りでチッチッチッチッと仏壇の鉦(かね)を叩くような音をたてるのは、コオロギの仲間のカネタタキ(鉦叩き)です。じっと耳を澄まさないと聞き取れないほど微かな音が、秋が近づいていることを教えてくれます。時には室内にもお出ましになりますが、心静かにその音に聞き入っていると、つい時間の経過を忘れてしまいます。
春から秋にかけて、毎晩、律儀に出勤してきて、キッチンや浴室の網戸やガラスの外から白い腹を見せてへばりついているのは、トカゲに似た爬虫類のヤモリ(ニホンヤモリ、守宮<やもり>)です。指の裏が特殊な構造をしているので、ペタッと吸い付くことができるのです。じっと動かずに待ち構えていて、カやガが明かりに引き寄せられてくると素早くパクッと食らいつきます。指定席にヤモリの姿が見えないと、今日は体の具合が悪いのだろうかと気になってしまうほど、文字どおり我が家の家守(やもり)のような存在です。そして、たまに子ヤモリが室内に出没するのですが、そのかわいらしさと言ったら。
閑話休題、何十年ぶりかで、『書を捨てよ、町へ出よう』(寺山修司著、角川文庫)を読み返してしまいました。天才的アジテイター・寺山が、「書を捨てよ、町へ出よう」、「きみもヤクザになれる」、「不良少年を目指せ」と、若者たちを挑発しています。これらの過激な発言を通して、「君に一番必要なものは想像力だ」と訴えたかったのでしょう。寺山を好きか嫌いかは別として、若者の必読書の一冊と考えています。