運慶その人と作品を知るのに最適な一冊・・・【続・独りよがりの読書論(35)】
【読書クラブ 本好きですか? 2017年11月27日】
続・独りよがりの読書論読書論(35)
『運慶×仏像の旅――天才仏師の技と魅力に出会う』(山本勉監修、JTBパブリッシング)は、運慶その人と作品を知るのに最適な一冊です。
円成寺の大日如来坐像の気品ある横顔、慈愛に満ちた眼差しには、男の私でさえ身も心も捧げたくなってしまいそうな魅力があります。
真如苑の大日如来坐像の横顔は、真理を悟ったらこういう顔になるのだろうなと思わせる静けさを漂わせています。
願成就院の毘沙門天立像のかっと見開いた目は、どのような状況に置かれようと己の使命を果たすぞという強い意志力に溢れています。
瀧山寺の帝釈天立像の横顔は、穏やかな表情を湛えていて、こういう人と友達になりたいなと思わせます。
東大時の重源上人坐像は、80歳を迎えた重源が数珠を爪繰る姿が写実的に写し取られ、まるで生きているかのようです。
このように素晴らしい作品を作った運慶はどんな顔をしていたのでしょうか。伝湛慶(運慶の長男)作の運慶坐像が収録されていますが、尖った頭が印象的です。
私の好きな空也上人立像(六波羅蜜寺)は、運慶の四男・康勝の作と記されています。
読み終わって、私は仏像の正面よりも横顔が好きなんだなあと、つくづく思い知った次第です。
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