榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ホフマンとGPT-4が著者という奇妙な本・・・【続々・独りよがりの読書論(4)】

【にぎわい 2024年1月31日号】 続々・独りよがりの読書論(4)

彗星のように出現したChatGPTを始めとする生成AIを仕事や教育の場などで使用することの可否の議論がかまびすしいが、鉄砲が伝来しているのに、鉄砲は使わず刀だけで戦うことの愚を考えれば、結論は自ずと明らかだろう。

リンクトイン、ChatGPT、BingAIと深い関わりを持つリード・ホフマンと、最先端の生成AIであるGPT-4が著者という奇妙奇天烈な本がある。『ChatGPTと語る未来――AIで人間の可能性を最大限に引き出す』(リード・ホフマン、GPT-4著、井上大剛・長尾莉紗・酒井章文訳、日経BP)は、教育、クリエイティビティ、司法と正義、ジャーナリズム、ソーシャルメディア、仕事が激変する、仕事で駆使する、ハルシネーション(幻覚)、知識人との対話、ホモ・テクネ(技術を生み出し仕える人間)、21世紀の分岐点――といったテーマについて、ホフマンが質問し、GPT-4がそれに回答するという形で話が進められている。

例えば、「17世紀の科学者ガリレオ・ガリレイと20世紀のコンピューター科学者アラン・チューリングによる、ガリレオの『科学的対話』とAIによるプロンプトへの応答の違いをテーマとした対談を書いてほしい」との要望に対する回答に、こういう一節がある。「AIの回答はデータとアルゴリズム、そして確率にもとづいています。科学的対話の目的は真実を発見し、実証することですが、AIの回答の目的は人間をまねて人間のふりをすることです。科学的対話は著者の才能と創造力の産物ですが、AIの回答は他人の才能と創造力の産物です」。これぞ、GPT-4の正体だ!