夏目雅子は、美しいだけの女性ではなかった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(61)】
【amazon 『無頼のススメ』 カスタマーレビュー 2015年4月25日】
情熱的読書人間のないしょ話(61)
薫風を受けて、新緑のイロハモミジが腕を大きく伸ばしている並木道は、私たち夫婦の気に入りの散策コースです。
閑話休題、サントリーの新聞広告の伊集院静の文章は味があります。新入社員に、「挑め。失敗しても起き上がり、また挑め。失敗をおそれるな。笑われても、誹られても、挑め。困難に立ちむかう人間の生き方の中には真理がある」と語りかけます。
こういう文章が書ける伊集院に興味を持ち、エッセイ集『無頼のススメ』(伊集院静著、新潮新書)を読んでみました。
「人は生まれる時も死ぬ時も、結局は一人でしかない。この当たり前の大前提を心にとめておけば、他人からどう言われようがかまわないだろう。他人の評価を気にせず、一人で歩いているうちに、ああ自分の足で歩けるんだ、という実感を大事にするようになるはずです」。心の底にこういう覚悟があるから、伊集院の生き方は肝が据わっているのだろう。
伊集院の2番目の妻で、27歳という若さで亡くなった夏目雅子について、こういう一節がある。「彼女は女優としてスターダムを駆け上がり、錚々たる人たちに求婚されることもありましたが、その後マスコミの前に出て、『交際している相手は趙(伊集院の本名)という名前のかたで、私はチマチョゴリを着てお嫁さんになるんです』と言い切った。そんな芸能人は初めてだったと思います。出自とかに対しても全然タブーがないし、世間の俗な常識のなかで生きてはいなかった」。夏目もまた、他人の思惑に囚われず、自分の価値観を大事にした女性だったようです。彼女が美しいだけの人ではなかったことを知り、ますます好きになりました。