榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

私の本たちとの付き合い方(その8)――四面を本たちに囲まれた書斎で癒やされる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(10)】

【恋する♥読書部 2014年4月3日号】 情熱的読書人間のないしょ話(10)

西行の故事を例に引くまでもなく、桜は、なぜこんなに私たちの心を妖しく騒がせるのでしょうか。開花前から、咲き初め、満開、散り始め、川面の花筏に至るまで、心が浮き立ち、落ち着かない日々が続きます。そういう桜の季節も過ぎ去ろうとしています。

閑話休題、「私の本たちとの付き合い方」を7回に亘り、思いつくままに述べてきました。①いかに選ぶか→「読みたい本リスト」は、いつもぎゅうぎゅう、②いかに入手するか→大勢の本たちを借り出す、購う、立ち読みする、③いつ読むのか→我が家にやって来た本たちの読む順番を決める、④いかに読むか→じっくり読むべき本以外は、付箋を活用して高速読書する、⑤いかに活用するか→一冊の本を骨までしゃぶり尽くす、⑥なぜ書評を書くのか→その本の魅力を伝えたくて、書評を書く、⑦いかに並べるか→取っておく本たちは、著者の五十音順に並べる――です。

今回は、⑧一番好きな場所は→四面を本たちに囲まれた書斎で癒やされる――です。

私を取り囲んでいる書斎の本たちの背表紙を眺めていると、その本の内容だけでなく、その本を読んだ時の状況が生き生きと甦ってくるのです。そして、その本に刺激されて読み込んだ本の背表紙に目が移ります。さらに、その本と関係が深い本へと視線を動かしていくうちに、どうしても書棚から引っ張り出して読み返したくなる本にぶつかります。そうなると、もういけません。いつの間にか夢中で読み耽ってしまい、女房が食事の支度ができたと呼びに来るまで時間の経過に気がつかないこともしばしばです。

古い本、新しい本を問わず、信頼できる友ともいうべき本たちに囲まれ、彼らと誰にも遠慮することなく心ゆくまで会話が交わせる場所、それが私の書斎なのです。

本たちの他に、ヴラマンクの「機関車あるいは駅」、シーシキンの「樫林の雨」、フェルメールの「牛乳を注ぐ女」といった絵が掛かり、若い時分に何度か泊まった八ヶ岳高原ヒュッテの大きな写真や、かつての部下たちとの記念写真、私が一番気に入っている青春時代の女房の写真が本箱の上に載っています。そして、アムステルダムで漸く見つけた箒に跨がるリアルな魔女の人形が私を見下ろしています。私の人生の最期は、この心安らぐ場所で迎えたいと念じています。